■「大量絶滅事象」

 IPBESの報告書は、「地球規模で進行する種の絶滅ペースの急激な上昇がすぐそこに迫っている」と警鐘を鳴らしている。

 報告書では、種の減少ペースが「すでに過去1000万年間で、平均数十倍から数百倍も上昇している」と指摘され、また「(今後)50万~100万種が絶滅の危機にさらされることとなり、その多くは数十年以内に危機的状況に置かれると予測される」とも記された。多くの専門家らは、過去5億年で6回目の、いわゆる「大量絶滅事象」がすでに進行中だと考えている。

 科学者らの推計によると、地球上には現在約800万種の生物が生息しており、その大半が昆虫だという。しかし、現在分類されている全動植物種の4分の1が、生息地を追われたり、捕食や汚染を受けたりしてすでに絶滅に向かいつつある。

 そして、劇的な減少率が数字でも見て取れるのが、野生哺乳類のバイオマス(生物量、生物体の総重量)だ。これは82%の減少となっている。

 なお、哺乳類の全バイオマスの95%以上を占めるのは、人と家畜だ。

■人口増加

 生物種の減少の直接的原因を重要度順に列挙すると、生息環境の縮小や土地利用の変化、食物のための狩猟や生物部位の違法取引、気候変動、汚染、ネズミ、カ、ヘビなど外来種の海路や空路での侵入であることが、今回の報告書で明らかになった。

「さらに、生物多様性の損失と気候変動の大きな間接的要因が二つある──世界人口の多さと、その消費能力の増大だ」と、ワトソン議長は指摘した。