【4月23日 AFP】氷床の融解量の測定は2019年現在、人工衛星や気象観測所、精巧な気候モデルなどのおかげでかなり正確に行うことができる。このたび、デンマーク領グリーンランド(Greenland)で1972年以降に消失した氷の量の算定が新たに行われた。

 氷床の融解量の推定は、1990年代や2000年代までにはかなりのレベルにまで可能になったが、それ以前の数十年間は技術があまり進んでいなかったため、信頼性の高い測定結果が得られていなかった。ちなみに1972年は、グリーンランドを定期的に撮影する目的で、地球観測衛星ランドサット(Landsat)が初めて軌道に投入された年だ。

 米カリフォルニア大学アーバイン校(University of California, Irvine)のフランス人氷河学者エリック・リグノット(Eric Rignot)氏は、カリフォルニアをはじめ、仏グルノーブル(Grenoble)、オランダ・ユトレヒト(Utrecht)、デンマーク・コペンハーゲン(Copenhagen)の共同研究者らとともに執筆した論文を米科学アカデミー紀要(PNAS)に発表。

「数十年分のデータを調べる際は、腰を落ち着けてから結果を見るのが最善策だ。どれほどの速さで変化しているかを目にするのは、いささか恐ろしいからだ」と説明しながら、「この変化は、グリーンランド南部の比較的気温の高い地域だけでなく、グリーンランド全域に影響を及ぼしている」と述べている。

 リグノット氏らは、氷の融解量を測定するのに三つの方法を用いている。

 一つ目は、人工衛星からレーザー光を使って氷河の高さを測定する方法。氷河が融解すると、氷河の高さの減少が衛星で検出される。

 二つ目は、重力の変動を測定する方法で、重力の減少によって氷の消失を検出する。この方法は米航空宇宙局(NASA)の人工衛星を用いて2002年から利用できるようになった。

 三つ目は、科学者らが開発した、いわゆる「質量平衡モデル」だ。(雨や雪によって)堆積した質量と(氷の河川流出によって)失われた質量を比較して、残存質量を算出する。