【4月19日 AFP】(更新、写真追加)英領北アイルランド第2の都市ロンドンデリー(Londonderry)で18日夜、暴動が発生し、女性記者が撃たれて死亡した。警察は19日、「テロ事件」との見方を示した。

 北アイルランド警察のマーク・ハミルトン(Mark Hamilton)氏の発表によると、死亡したのはライラ・マッキー(Lyra McKee)さん(29)で、クレガン(Creggan)地区で起きた「画策された暴力沙汰の最中に殺害された」という。

 現場は住宅街で、「銃を持った男1人が何発か発砲し、マッキーさんが負傷した」とハミルトン氏は説明。「テロ事件として」捜査していることを明らかにした。警察はその後、事件に関連し複数の人物の行方を追っていると発表した。

 マッキーさんは事件前、暴動の写真1枚をインターネット上に公開し、ロンドンデリーの別の呼称であるデリー(Derry)を使って「今夜のデリー。まるっきりの狂気」と投稿していた。ソーシャルメディア上では、複数の車が炎上している様子や、警察車両に火炎瓶や花火を投げつける人々の写真が確認できる。

 暴動は、キリスト教の祝日イースター(Easter、復活祭)を週末に控える中で起きた。北アイルランドのイースターは、アイルランド独立につながった1916年の「イースター蜂起(Easter Rising)」をカトリック系住民(共和派)が祝うとともに、英国の統治に抗議する日となっている。

 共和派政党「シーラ(Saoradh)」は、「共和派の有志」が警察から「人々を守ろう」としていたところ、発砲が起きてマッキーさんが「誤って」撃たれたと主張。警察が「イースター蜂起の式典に先立ち、共和派を攻撃するため」クレガンに出動したとして、「このような侵攻に対する必然的な反応は、クレガンの若者らによる抵抗だ」と述べた。

 一部の当局者は、暴動を起こしたのは、アイルランド統一運動の非暴力主義への移行に反対する共和派武装組織「新IRA(New IRA)」だったとみている。シーラ党に対しては新IRA傘下の政治団体だとの疑惑が浮上しているが、同党はこれを否定している。

 著作権代理人によると、マッキーさんは米誌アトランティック(The Atlantic)やニュースサイトのバズフィード(BuzzFeed)に寄稿し、2016年には米経済誌フォーブス(Forbes)の「30歳未満の30人(30 under 30)」に選出されている。

■イースターと和平合意

 カトリック系の民族主義政党シン・フェイン党(Sinn Fein)のミシェル・オニール(Michelle O'Neill)副党首は、過激派の犯行だと事件を非難。「社会と和平プロセス、聖金曜日の合意(Good Friday Agreement)への攻撃だ」と述べて、冷静になるよう人々に呼び掛けた。

「聖金曜日の合意」は、30年に及んだ北アイルランド紛争の終結へ向けて1998年に結ばれた包括和平合意のこと。合意に至った日がイースター前々日の祝日「聖金曜日」だったため、この名で呼ばれている。合意により、アイルランドとの統一を望むカトリック系武装組織と、英国の統治存続を望むプロテスタント系武装組織や英国軍との間で繰り広げられた血で血を洗う抗争は、ほぼ終結した。紛争では約3500人が死亡し、その多くにカトリック系過激組織アイルランド共和軍(IRA)が関与している。

 ロンドンデリーでは今年に入って自動車爆弾攻撃が1件、自動車乗っ取り事件が2件発生しており、警察はここ数か月の治安悪化の背景に新IRAがいると非難している。(c)AFP