【4月19日 AFP】オランダ・エールディビジのアヤックス(Ajax)は、一世代に一度、不滅の若手育成の公式を掘り返し、欧州チャンピオンズリーグ(UEFA Champions League 2018-19)の舞台で、莫大(ばくだい)な資金を投じて集められた百戦錬磨の選手がいるビッグクラブを破った。

 16日に行われたチャンピオンズリーグの準々決勝で、アヤックスは敵地トリノ(Turin)でクリスティアーノ・ロナウド(Cristiano Ronaldo)を擁するユベントス(Juventus)を相手にただ番狂わせを起こしただけではなかった。

 最終的にはイタリア・セリエAで連覇を続けているユベントスを完全に打ち負かし、第2戦を2-1で勝利すると合計スコアでも3-2と上回った。

 ユベントスが前半にリードを奪う中、同点弾を挙げて試合の形勢を一変させた21歳のMFドニー・ファン・デ・ベーク(Donny van de Beek)は、「5点は取れたと思う」とコメントした。

 また、19歳ながらキャプテンを務めるCBのマタイス・デ・リフト(Matthijs De Ligt)は、二人の相手DFに競り勝ち、67分にヘディングで決勝ゴールを挙げた。

 デ・リフトは「高いボールだったから合わせようと思った。ゴール隅に決まる完璧なヘッドだった」と振り返った。

 昨シーズンのリーグタイトルをPSVアイントホーフェン(PSV Eindhoven)に譲り、2位でのフィニッシュになったアヤックスは、今季のチャンピオンズリーグで昨年7月から三つの予選ラウンドを戦わねばならず、16日のユベントス戦は今大会での通算16試合目となった。

 決勝トーナメント1回戦で王者レアル・マドリード(Real Madrid)と対戦したアヤックスは、ホームでの第1戦で今大会で唯一の黒星を喫したが、第2戦では敵地サンチャゴ・ベルナベウ(Santiago Bernabeu Stadium)で記憶に残る4-1の勝利を収め、逆転での勝ち上がりを決めた。

 アヤックスというチームは経験によって支えられているが、この日のユベントス戦で再び人々の目を引いたのは、オランダ生まれの若きスターたちだった。

 ファン・デ・ベークやデ・リフトに加え、中盤では21歳のフレンキー・デ・ヨング(Frenkie de Jong)が、前線では2017年に加入した22歳のブラジル人FWのダビド・ネレス(David Neres)が輝きを見せた。

 デ・リフトは欧州サッカー連盟(UEFA)の公式サイトで、「このチームの選手たちは大きな可能性を秘めている。僕らはまだ若く、試合ごとに成長している」と話していた。

 しかしアヤックスは、たとえチームが若手主体であったとしても、今は勝利しなければならないということを理解した上で今季に臨んだ。

 アヤックスの最高経営責任者(CEO)を務めるエドウィン・ファン・デル・サール(Edwin Van Der Sar)氏は、「チャンピオンズリーグの決勝トーナメントに進んだチームの中で、われわれの予算は最も低い」「しかし、アヤックスはサッカー界において名門だ」とコメントした。

 アヤックスからユベントスに渡り、現在は古巣に復帰したファン・デル・サール氏は、AFPが2月に行ったインタビューの中で「選手が一緒にいれば、レベルの高いチームは生まれやすい」と語っていた。

 しかし、アヤックスの分解はすでに始まっている。

 デ・ヨングは来季からFCバルセロナ(FC Barcelona)に加入することが決定しており、人気が高いデ・リフトも退団する可能性が高い。

 ファン・デル・サール氏は「今の選手たちとこれからも一緒にい続けたいが、われわれはビッグクラブの経済力についても理解している」と話した。

「私も昔は選手だったからね」

 ファン・デル・サール氏は、アヤックスが最後にチャンピオンズリーグを制覇した1995年のチームでGKを務めていた。

 当時のチームは、エドガー・ダビッツ(Edgar Davids)氏やクラレンス・セードルフ(Clarence Seedorf)氏、パトリック・クライフェルト(Patrick Kluivert)氏といった早咲きの若手と経験を兼ね備えた地元の選手が大半を占めていた。

 チャンピオンズリーグでは1996年に決勝、1997年に準決勝に駒を進めたが、ともにユベントスに敗れた。

 アヤックスの22年ぶりとなる4強入りに、デ・リフトは「奇妙だし、変な感じ。当時僕は生まれてもいなかったから」と語った。

 チャンピオンズリーグの準決勝に進出したことで、アヤックスは少なくとも1200万ユーロ(約15億円)を手にすることになる。

 ファン・デル・サール氏は「そのお金のことは気にしていない」「もちろん選手には給与を払わなければならない。しかし、ここはサッカーの世界であり、つまりはそういうことだ。われわれはこのクラブが望むようにプレーし、人々がイメージを抱いているようなプレーをしなければならない」と話している。(c)AFP