【4月17日 AFP】大火災に見舞われ焼け落ちた仏パリのノートルダム大聖堂(Notre Dame Cathedral)の屋根は、かつて「中世を仰天させた」伝説と呼ばれ、今なお大工の名匠らを魅了してやまない存在だった。「シャルパント・コンセプト(Charpente Concept)」のトマス・ビュヒ(Thomas Buechi)氏がAFPのインタビューに応じ、屋根建設の様子や再建への道のりを語った。

■大工にとっての屋根の意味とは?

 フランスの大工にとって、おそらく最高傑作の一つだ。今回の火災は、画家にとって「モナリザ(Mona Lisa)」が燃えたようなものと言える。

 屋根の構造は、いくつかの理由で伝説になっている。非常に複雑な造りが中世を仰天させた。

 まず、木材の準備に50年を要した。原木の伐採は1200年ごろから始められ、約1500本が切り出された。

 切り落とされた木は1年間、地球のエネルギーに合わせて並べて置かれた。次に、皮が剥がされ、カビや昆虫から木材を守るため沼に25年間沈められ、1225年頃に水中から取り出された。その後、のこぎりで切って梁(はり)が造られ、さらに25年間乾燥された。

■火事で崩壊した尖塔を建てたのは誰か?

 フランス革命後、ノートルダム大聖堂は廃虚となったが、19世紀半ばに尖塔(せんとう)の再建が決まった。

 仏建築家ウジェーヌ・ヴィオレルデュク(Eugene Viollet-Le-Duc)の他、神童と呼ばれた大工の名匠アンリ・ジョルジュ(Henri Georges)も再建に携わったが、その存在は忘れられている。

■再建の課題は?

 石材がどの程度被害を受けたのかまだ分からない。建物がいまだに立っているのは奇跡だ。大聖堂の再建には木材分野のあらゆる専門家が関与するだろう。

 シャルトル大聖堂(Chartres Cathedral)の再建時のような行為は避けるべきだ。シャルトル大聖堂の屋根は19世紀に火災に見舞われ、鉄の骨組みに置き換えられてしまった。

 フランスにはカシの木が豊富にあり、木材の調達に問題はない。(仏中央部の)トロンセ(Troncais)の森には、いくつか樹齢数百年のカシの木がある。

 1200年のような方法で木材の準備をすることは不可能だ。だが、今日の技術を使えば作業期間は短縮できる。今から2年後に梁が完成し始め、5年後には屋根の再建が可能だ。(c)AFP/Marie WOLFROM