【4月12日 AFP】市街上空をゆったり進む米アマゾン・ドットコム(Amazon.com)のロゴが書かれた白い巨大飛行船、そこから次々と飛び出る小型の配送用ドローンたち──ツイッター(Twitter)やフェイスブック(Facebook)で拡散され、数十万回視聴されるなど話題になったこの動画、実は日本人映像作家がエープリルフールの「ネタ」として制作したCG動画だった。動画が本物ではないと見抜いた人もいたが、多くの人は本物だと信じたようだ。

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 拡散された動画はさまざまなキャプションとともにシェアされた。エープリルフールの4月1日にフェイスブックでシェアされ、これまでに約30万回再生されている動画には「切望するディストピアの世界に一歩近づいた」というキャプションが添えられ、翌2日に別のユーザーがシェアした同じ動画には「戦闘ドローンを送り出すアマゾンの巨大空母」とのキャプションが付けられていた。

 これらの動画にはユーザーたちから「未来は今、ここにある」といったコメントや、友人に向けて「こういうことって絶対に起きないって言ってなかった?」と語り掛けるコメントなどが寄せられた。

 しかし、テクノロジー関連サイト「ギズモード(Gizmodo)」やオーストラリアのニュースサイト「news.com.au」といった一部メディアがこの動画に関し、日本人ツイッターユーザーの@zozi009さんが投稿した動画で、本人はCGを使って作成したものだと種明かしをしていると報道。

 @zozi009さんのアカウントに記載された略歴には、「動画いろいろ作ってる暇人。通称厳島神社の人。主にニコ動だけど、最近は変な動画をツイッターで公開中。お仕事でPSvitaの艦これ改で全艦娘をLive2Dで動かしました。詳細はブログにて。あと専門学校で3D教えたり。どんどんRTしてください」とある。

 また、話題の動画を投稿したツイートには「ドローンで配送するという話があったけど、もう始まってたんだな。もっと先の話かと思ってた」というコメントとともに、「#エイプリルフール」「#zozi撮影」というハッシュタグが付いていた。

 さらにこれに続くツイートには3枚の画像が添付され、飛行船の3Dメッシュモデルを用いた動画の作成方法が説明されていた。ツイートには「午後のネタバレ。信じてる人は皆無だろうけど一応。thetaVでHDRI作ってそのままライティングした。後ろに余計なものも入れてみたけどあまり気づかれてない模様」というコメントも添えられていた。

 HRDIとはハイダイナミック合成、thetaVとは球面カメラの型式を意味している。なお、thetaVはアマゾンでも販売されている。

 また@zozi009さんは別のツイートで、飛行船について米航空防衛機器大手ロッキード・マーチン(Lockheed Martin)が開発した実際の飛行船から着想を得たものだと明かしている。

 アマゾンは実際、「プライム・エア(Prime Air)」と呼ばれるドローン配送システムを開発しており、同社ウェブサイトには「アマゾンの未来の配送システムはドローンを使い、30分以内に安全に荷物を届けることを目的としている」と記載されている。

 ただ、アマゾンによるとこの配送システムは現在試験中でまだ実用化されておらず、「われわれのビジョンを安全に実現するために必要な規制当局の支援が得られた段階・状況において運用を開始する」としている。(c)AFP