【4月12日 AFP】一卵性双生児の兄弟のうち一人が宇宙飛行士として1年間宇宙空間に派遣され、もう一人が地球上に残り、この二人を詳細に観察したらどんな結果になるだろうか。

 米航空宇宙局(NASA)は11日、この画期的な研究の結果を米科学誌サイエンス(Science)に発表した。火星探査などの長期にわたる宇宙飛行の危険要素を理解する手掛かりとなる可能性がある。

 今回の研究で、長期の宇宙飛行が原因で人体に生じた変化の大半は、地球に帰還後、間もなく通常の状態に戻ることが明らかになった。

 米コロラド州立大学(Colorado State University)のスーザン・ベイリー(Susan Bailey)博士によると、今回の研究結果は「宇宙飛行に対する人体の反応に関してこれまで得られた中で最も包括的な見解」だという。

 NASAの「双子の比較調査(Twins Study)」では、国際宇宙ステーション(ISS)で1年間を過ごした米宇宙飛行士のスコット・ケリー(Scott Kelly)氏と、地球にとどまった双子の兄弟のマーク・ケリー(Mark Kelly)氏を詳細に観察した。マーク氏も元宇宙飛行士だ。

 12大学の研究者84人からなる研究チームは、マーク氏を比較基準として、スコット氏が宇宙空間に滞在した1年間の分子的、認知的および生理的な影響を記録した。

 米スタンフォード大学(Stanford University)のマイケル・スナイダー(Michael Snyder)博士は「宇宙に赴くことに伴い、多数の遺伝子的および分子的な変化が生じる」と話す。ただし「それらの変化はほぼすべてが、(地球帰還後)6か月後までに平常に戻った」と博士は述べ、「地球に帰還すればほとんど元に戻ることが分かっているのは心強い」と語った。

 米スペースシャトル(Space Shuttle)に2回搭乗した経験を持つベテラン宇宙飛行士のスコット氏は、50歳だった2015年3月27日~2016年3月1日の340日間連続でISSに滞在した。

 スコット氏の観察は宇宙飛行前と地球帰還後、およびISS滞在中に行われ、血液、尿、便などのサンプルが補給船で地球に送られた。同時に地球上では、自身も4回のスペースシャトル搭乗経験を持つ双子のマーク氏を「遺伝子的に一致した地上対照群」として観察した。

 米ジョンズ・ホプキンス大学(Johns Hopkins University)のアンディ・ファインバーグ(Andy Feinberg)博士は「特異な点は二人が双子であるため、基本的に同じ遺伝情報を持っていることだ」と指摘した。