【4月12日 AFP】米小売市場の覇権をめぐる米小売・IT大手アマゾン・ドットコム(Amazon.com)と米小売大手ウォルマート(Walmart)のつばぜり合いが11日、賃上げと租税回避疑惑をめぐる悪口合戦に発展した。

 口火を切ったのは、アマゾンのジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)最高経営責任者(CEO)。株主宛ての年次書簡の中で、最低賃金を時給15ドル(約1680円)に引き上げてみろと挑発したのだ。

「わが社は常に他社に負けない賃金を提示してきたが、それ以上の賃金を提示する時が来たと判断した」とベゾス氏は述べ、次のように続けた。

「小売業界最大の競合他社(どこを指すかは分かるでしょう!)に挑戦する。わが社の福利厚生と最低時給15ドルに対抗してみろ。さあ! いっそ16ドル(約1790円)に引き上げて、われわれの挑戦に応えてみせろ。これは、万人に恩恵をもたらす競争だ」

 具体的な社名は出していないものの、この書簡にウォルマートのダン・バートレット(Dan Bartlett)副社長がツイッター(Twitter)上で反論した。

 バートレット氏は、アマゾンが2018年に112億ドル(約1兆2500億円)の純利益を上げながら全く税金を払っていないとするNGO報告書に言及した、ベゾス氏の写真付き記事をリンクで紹介。「おい、そこの小売業界の競合他社(どこを指すかは分かるでしょう!)、税金を払ったらどうだ?」と投稿するとともに、ウォルマートの倉庫従業員はほとんどが「とっくの昔から」時給15ドル以上だと主張した。

 このやり取りからは、両社が消費者のための競争と称して相手のあら探しをしつつ、微妙な差異については都合良く無視してきたことが浮き彫りになった。

 アマゾンはレジを置かない実店舗「アマゾン・ゴー(Amazon Go)」も展開中だが、ベゾス氏は同じ年次書簡の中で、同事業の未来は明るいとコメント。客が商品を持って店外に出ると自動的に精算され、アマゾンのアカウントに代金が請求される仕組みを多くの顧客が「魅力的」な体験だと考えているとして、「行列待ちが好きな人はいない」「実店舗で顧客を心から喜ばせるものを誰よりも早く発明する必要性を感じていた」などと述べている。(c)AFP