【4月11日 CNS】中国で最近、上海でホームレス生活を送る沈巍(Shen Wei)さんが、複数のショート動画プラットフォームで注目を浴びている。いつも地下鉄や街灯の下に座り込んで「尚書」「論語」などの中国古典を読んでいる沈さんは、ネットユーザーから「国学大師」と呼ばれている。ある日、100人近いライブ動画配信者やネットビジネス関係者らが、沈さんの周りに集まった。「ネットセレブ」の女性らが競って沈さんと記念撮影をし、早速、その様子をネットで配信していた。

 沈さんは上海出身で、幼い頃から読書が好きだった。家が貧しく本を買う金がなかったため、廃品を拾って金に換え、本を買うことを思いついた。知識欲が強くなるにつれ、人との付き合いが少なくなり、ますます本に親しむようになっていった。

「春秋左氏伝」や「尚書」、企業管理、各地の故事・逸話などを語る沈さんの映像がネット上にアップされると、ネットユーザーは沈さんを「国学大師」「流浪大師」と呼ぶようになった。

■「自分の思うところに従うと、一か所に落ち着いていられない」

 沈さんのごみを拾う習慣は、社会人になって上海市内の行政機関で働き始めた後も変わらなかったという。

「初出勤の日から、毎日退勤時に必ず職場の建物のごみ箱を一つ一つのぞいてごみを拾った」と沈さん。「初めの頃は誰も気づかなかったが、ある日、見つかって上司に報告され、それ以降は『病気休暇』を取らされて今日に至っている」。沈さんによると、職場は26年間、ずっと給与を支払い続けている。外で放浪を続けるのは、ごみを拾う習慣があるという理由のほうが大きいという。

「住むところを探す努力はしているが、自分の思うところに従うと一か所に落ち着いていられない」と沈さんは言う。

 沈さんの周りにいた人々に来訪の目的について取材をすると、「ネット上で有名になっているので、ライブ動画配信をやって閲覧回数を稼ぎたいと思って来た」と正直に答える人もいれば、「沈さんを崇拝しているから」とか「沈さんに本を持ってきた」という人もいた。

 この現象について、上海大学(Shanghai University)社会学部の顧駿(Gu Jun)教授は次のように語った。「大部分のショート動画配信プラットフォームのユーザーは1990年代生まれの人たちで、人に対する思いやりや尊重、同情心などが欠如している。猟奇的な心理だけで配信する人もいる。ライブ動画配信と映像シェアをする時に、『流浪大師』の気持ちを考えていたのだろうか?」(c)CNS/JCM/AFPBB News