【4月8日 AFP】オーストラリア政府が国内政治への中国政府の干渉疑惑をめぐり極秘に行った調査について、中国当局が豪在住の中国系オーストラリア人2人に情報を提供するよう圧力をかけていたことが分かったと、豪メディアが8日報じた。

 中国の情報局員から尋問を受け、豪政府の極秘調査に関する機密情報の提供を求められたとされるのは、ヤン・ヘンジュン(楊恒均、Yang Hengjun)名義で作家活動や民主化運動を行っているヤン・ジュン(楊軍、Yang Jun)氏と、シドニー工科大学の准教授(中国研究)で元新聞編集者のフォン・チョンギ(馮崇義、Feng Chongyi)氏。

 ヤン氏は今年1月に中国を訪問した際、「国家の安全に危害を加えた」容疑で中国当局に拘束されている。

 この極秘調査は、2016年に当時のマルコム・ターンブル(Malcolm Turnbull)首相が指示して実施されたもの。ヤン氏とフォン氏はいずれも、ジャーナリスト出身で調査の責任者に任じられたジョン・ガーナウト氏の友人だという。

 豪紙シドニー・モーニング・ヘラルド(Sydney Morning Herald)とエイジ(The Age)、オーストラリア放送協会(ABC)は8日、合同取材によって、中国の情報当局が豪政府の調査の詳細を入手するため作戦を展開していた事実が明らかになったと一斉に報じた。

 ABCによると、ヤン氏は2018年にシドニーでガーナウト氏を訪問する途中、中国当局者の妨害を受け、尋問を受けた。ガーナウト氏は、このときヤン氏が受けた尋問について「私に関するものだった」「私が何をしているか、何について調べているか(を聞かれた)」とABCに語っている。

 一方、オーストラリアの永住権を有するフォン氏は、2017年に中国を訪れた際、数日間にわたって当局に拘束され、ガーナウト氏について尋問されたとABCに告白。「中国当局は彼(ガーナウト氏)のことをよく知っていた。尋問中、彼に対する怒りを隠さなかった」と述べている。

 中国は近年、太平洋の島しょ国に対する影響力を強めており、中国の介入への懸念を募らせる豪政府との間で緊張が高まっている。(c)AFP