【4月5日 AFP】フランス各地で展開されているエマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領の政策に抗議する「ジレ・ジョーヌ(黄色いベスト、gilets jaunes)」運動は、発生から数か月がすぎた。AFPは、抗議活動中に治安当局が放ったゴム弾などにより負傷し、片目を失った人10人以上にインタビューを行った。

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 クリストフ・カスタネール(Christophe Castaner)内相は4日、警察が「ジレ・ジョーヌ」参加者に対し暴力的行為を行った疑いがある209件について、捜査を行うと表明した。当局はこれまで、抗議活動参加者に対する警察の行動の正当性を主張してきた。

 捜査対象の209件の中には、40ミリの大きさのゴム弾が発射される防御弾発射装置(LBD)を使用したケースもある。LBDの使用に対しては、野党や市民団体などから批判の声が上がっている。

 カスタネール氏は、警察と憲兵も抗議活動参加者の行為により1628人が負傷しており、中には重傷者もいると指摘している。

 AFPが行ったインタビューの一部を、以下に紹介する。

■フランク・ディドロン(Franck Didron)さん/庭師

 20歳のディドロンさんは、昨年12月1日にパリでの抗議活動に参加していた時、頭をゴム弾で撃たれ、右目の機能を失った。

「ジレ・ジョーヌたちが『気を付けろ、警察が突撃してくる』と言ったので、左右を見た。背後を見ようと顔を動かした時、LBD弾が当たった」と話した。

 ディドロンさんは今、新しい仕事を見つけられないのではないかと恐れている。

■アレクサンドル・フレイ(Alexandre Frey)さん/イベントマネジャー

 37歳のフレイさんは昨年12月8日、パリでの抗議活動に参加していた時、治安部隊に囲まれ、ゴム弾を受け、右目の視力を失った。

「至る所で発砲があり、火の手が上がって、戦争だった…友人が脚を撃たれたので安心させるため、横たわった友人に付き添っていた」

「2人とも再び狙われ、私の片方の目に弾が当たった。眼球や網膜などすべて粉々になった。倒れはしなかったが、友人たちが私に向かって『目がないぞ、目がないぞ!』と言っていた」

 このけがで、フレイさんは歩くのが困難になり、車の運転もできなくなった。「私の人生は壊された。10年間刑務所に入れられた方がましだった」と話す。

■フィオリーナ・リニエ(Fiorina Lignier)さん/学生

 20歳のリニエさんの左目は見えなくなった。昨年12月8日パリでの抗議活動に参加中に催涙ガス弾を浴び、重傷を負ったためだ。

 リニエさんは、シャンゼリゼ(Champs-Elysees)通りで静かに抗議活動を行っていた集団の中にいたと語る。「後退しようとしたが、憲兵に行く手を阻まれた。警察が突撃してきて、催涙ガス弾を浴びた。体中を衝撃が走り抜けた。数秒間気を失っていた」

 リニエさんは今、明るい光を避け、10分間家事をしたら休まなければいけないと言う。「雨戸はめったに開けない。モグラのように暮らしている」と話す。

■パトリス・フィリップ(Patrice Philippe)さん/トラック運転手

 49歳のフィリップさんは、昨年12月8日のパリでの抗議活動に参加していた。だが、警察に攻撃するようなことはなかったと主張する。フィリップさんは右目の視力を失った。

 フィリップさんは、抗議活動の参加者がシャンゼリゼ通りの敷石を剥がしているのを見て撤退しようとしていたと話す。だが、警察に行く手を阻まれたと言う。

「攻撃的ではない態度で行進していた。その場を去りたかったので憲兵に話しかけたかった…その時、催涙弾を浴び、数秒後にLBDの弾が目に当たった」

 フィリップさんは今、14歳の娘をどうやって養えばいいのか悩んでいる。

 ジレ・ジョーヌ運動は終わるかもしれない。だが、フィリップさんは今や「もっと重要な戦い…反非致死性兵器という戦い」に参加している。

■バネッサ・ランガルド(Vanessa Langard)さん/介護士

 33歳のランガルドさんは友人と一緒に、昨年12月15日のパリでの抗議活動に参加していた。その時、ゴム弾で左目を撃たれた。

 視神経が損傷され、左目はほぼ見えなくなった。また、記憶力にも問題があるという。

 警察の非常線から引き返そうとしていた時に、私服警官が到着し、発砲されたと話す。

「自分が自分ではないように感じる」とランガルドさん。「私の人生は日々戦いになった」 (c)AFP/AFP bureaus