■超巨大な波

 チチュルブ小惑星が衝突したのは、化石発掘現場のタニスから3050キロ離れた現在のメキシコ・ユカタン半島(Yucatan Peninsula)だ。

 チチュルブの衝突は強力な地震を引き起こし、その地震波はわずか13分後にタニスに到達したと研究チームは推計している。

 この地震によって、西部内陸海路(Western Interior Seaway)として知られる内海の入り江では水と土石からなる超巨大な波が発生した。その影響を受け、タニスでは「淡水魚、陸生脊椎動物、木の枝や幹、アンモナイトやその他の海生生物など、多数の動植物が寄せ集められた」状態になったのだという。

 研究ではまた、この魚の一部が、微小なガラス粒子である「小球体」を吸い込んでいたことが明らかになっている。チチュルブの衝突によって放出された小球体は、衝突から約15分後にタニスに降り注いだと考えられている。

 今回の研究について興味深いと話すのは、米スミソニアン自然史博物館(Smithsonian National Museum of Natural History)のカーク・ジョンソン(Kirk Johnson)館長だ。ジョンソン氏は、米カリフォルニア大学バークレー校(University of California, Berkeley)のウォルター・アルバレス(Walter Alvarez)教授が研究に参加していることが、研究内容に信ぴょう性を与えていると指摘している。アルバレス教授は1980年、隕石の衝突が恐竜絶滅の原因となったとする説を初めて提唱した科学者だ。(c)AFP/Ivan Couronne