【4月23日 AFP】「よーし、いいぞウェイン、いい球だ!」――聞き間違えようのない米国英語がグラウンドに響く。カリフォルニアやフロリダの話だと思うかもしれないが、ここは米国とは地球の反対側にある中国の南京(Nanjing)。米メジャーリーグ(MLB)は今、中国初の野球スターの発掘にいそしんでいる。そしてスターが見つかるとすれば、その可能性が高いのがこの南京なのだ。

 MLBは現在、中国の3か所に育成センターを開設している。そして今年2月、そのうちの南京校から3人の若者がミルウォーキー・ブルワーズ(Milwaukee Brewers)と契約した。もちろんマイナー契約からのスタートだが、「大リーグ」昇格の可能性はゼロではない。

 米ミズーリ州生まれのレイ・チャン(Ray Chang)氏は、サンディエゴ・パドレス(San Diego Padres)やミネソタ・ツインズ(Minnesota Twins)と契約を結び、中国代表でプレーした現役生活を経て、現在はコーチとして中国野球の発展という重責を担っている。

 三つの育成センターに所属する若手選手は合計でおよそ100人。そのうち南京校のチャンコーチが受け持つのは、「よりすぐりの精鋭」である12~18歳の23人だ。ウェインやソニー、ロジャーといったあだ名で呼ばれる彼らは、世界最多の人口を誇る中国全土からスカウトされてきた若者で、はるばるチベットからやって来た選手もいる。

 35歳のチャンコーチは「実のところ、われわれは野球選手だけを探しているのではありません。探しているのはアスリートです」と話す。

「その年齢(スカウト対象は11歳)だと、野球選手としてはまだまだなので、運動能力に優れた子どもを探します。『ほら、これがグラブ、これがバットだ。6年続けて、どうなるか見てみようじゃないか』と言えるような子どもをね」「もちろん、理想を言えば5歳か6歳から野球をやっている子が望ましい。だけど現実には、中国にそんな子どもはいません」

 若者たちは、水曜から金曜まで1日4、5時間の厳しい練習を積む。土曜と日曜の午前には試合を行い、午後にはまた練習だ。対戦相手は近くの大学野球部や地元チームが多いが、日本や台湾、オーストラリア、さらには米国へ遠征することもある。センター内での共通語はほぼ英語で、学費や練習代、生活費はすべてMLB持ち。「本当に夢のような環境」だとチャンコーチは言う。

「われわれの最大の目標は、選手が米国でチャンスをつかむこと。もちろん、一番良いのはプロチームと契約することです」「ただし全員がそうしたチャンスをつかめるわけではありません。(プログラム開始からの)この10年間でプロ契約を勝ち取れたのは7人です」

「ですが昨年は4人でしたから、確率は上がってきています」