■寄付の拒否

 サックラー家とパーデュー・ファーマは切っても切り離せない関係にある。

 爆発的な人気が出たオキシコンチンが開発された時に同社の代表を務めていたのはモーティマー氏とレイモンド氏だった。アーサー氏は、オキシコンチンの製造が始まる10年近く前の1987年に、モーティマー氏は2010年、レイモンド氏は2017年に亡くなった。

 米テキサス州オースティン(Austin)在住のレイモンド氏の息子リチャード(Richard Sackler)氏は、民主・共和両党と保守系シンクタンクに献金をしている。

 一方、モーティマー氏の7人の子どものうち数人が、パーデュー・ファーマの役員として経営に参加していた。そのうちの一人、モーティマーD.A.(Mortimer D.A. Sackler)氏は1995~2015年、ニューヨークのグッゲンハイム美術館(Guggenheim Museum)に対し総額900万ドル(約10億円)を寄付している。

 だが、グッゲンハイム美術館は先月、サックラー家との関係をすべて絶ったと発表した。同美術館は「(サックラー家からの)寄付金をこれ以上受け取る予定はない」と明言した。

 英ロンドンの「ナショナル・ポートレート・ギャラリー(National Portrait Gallery)」も先月、サックラー財団(Sackler Trust)からの寄付金100万ポンド(約1億4600万円)の受け取りを取り消した。同国の美術館グループ「テート(Tate)」もそれに続いた。

 サックラー財団も先月、英国での寄付活動をすべて保留すると発表している。

■相次ぐ訴訟

 米コネティカット州に拠点を置く非上場企業のパーデュー・ファーマは1995年にオキシコンチンの販売を開始した。オキシコンチンによる収益は300億ドル(約3兆3400億円)以上ともいわれている。

 米疾病対策センター(CDC)によると、オピオイド系鎮痛剤の過剰摂取(処方薬、ヘロイン、麻薬性鎮痛薬フェンタニル)による米国の死者数は2017年には4万7000人に達した。同じ年のオキシコンチンおよび類似の鎮痛剤の依存症患者数は170万人に上っている。

 パーデュー・ファーマおよび同社の役員3人は2017年、オキシコンチンによる依存の危険性を偽っていたとして米司法省に提訴され、6億3450万ドル(約700億円)の罰金を支払った。同社は現在も連邦裁判所で約1600件、州裁判所で数百件の訴訟を起こされている。

 報道によれば、パーデュー・ファーマは先月27日、オピオイドまん延の原因は同社にあるとするオクラホマ州との裁判で、2億7000万ドル(約300億円)を支払い州と和解した。

 同社の役員として最後まで残っていた親族は先月に退任した。

 サックラー家の広報担当者は今のところ、一連の問題についてのコメントを拒否している。(c)AFP/Luc OLINGA