【3月30日 AFP】オーストラリア政府は、過激思想などに関連する暴力的コンテンツの削除を怠ったソーシャルメディア(SNS)やIT企業を処罰する法案を来週議会に提出する方針だ。企業に巨額の罰金を科すほか、企業幹部を禁錮刑の対象にする内容。

 オーストラリア政府は、ニュージーランドのクライストチャーチ(Christchurch)のモスク(イスラム礼拝所)2か所で今月15日に発生し50人が犠牲になった銃乱射事件を受け、ソーシャルメディアがテロリストに「武器」として利用されないよう運営各社に求めている。

 米フェイスブック(Facebook)は、自社のプラットフォームで公開されていたクライストチャーチの事件の犯行の様子の動画150万件を「速やかに」削除したと発表した。事件の模様を撮影した17分間の映像は、インターネットで広く共有された。専門家らは、この動画について、襲撃から数時間以内に簡単に削除が可能だったとしている。

 スコット・モリソン(Scott Morrison)首相は、「大手ソーシャルメディア企業は、自社の技術が残忍なテロリストたちに利用されないよう、あらゆる行動を取る責任がある」と述べた。26日にフェイスブックやツイッター(Twitter)、グーグル(Google)なIT企業大手の幹部らと会った同首相は、オーストラリアは他の20か国・地域(G20)諸国に対し、ソーシャルメディア企業の責任を問うように働き掛ける意向を示した。

 クリスチャン・ポーター(Christian Porter)司法長官は新法案について、テロ行為や殺人、レイプなどの「忌まわしい暴力的なコンテンツ」を速やかに削除しないソーシャルメディア運営企業を罪に問うものだと説明した。

 ポーター司法長官によると法案は、暴力的コンテンツの削除を怠ったソーシャルメディアプラットフォームに、数百億ドル(数兆円)にもなる年間売上高の10%以下の罰金を科し、運営会社の幹部には3年以下の禁錮刑を科す内容だという。

 さらにポーター司法長官は、「(テレビなどの)大手マスメディアがこういったコンテンツを放送すれば放送免許を失うリスクにさらされる。それとは違う扱いをソーシャルメディアにする理由はない」と述べた。

 しかし、ニューサウスウェールズ大学(University of New South Wales)のサイバーセキュリティー専門家、ナイジェル・フェア(Nigel Phair)氏は法案が禁錮刑を科す内容になっていることに疑問を呈した。

 フェア氏は今週豪テレビ局SBSに対し、「刑罰はオーストラリア在住の幹部に限られる。こういった人たちはおおむねマーケティング担当の幹部で、プラットフォームの管理・運営の責任者ではない」と指摘した。(c)AFP