【3月30日 AFP】氷点下の気温が珍しくない米アラスカ州が記録的な暖かさに見舞われ、16.7度超を観測した地域も出てきている。

 気候評価と政策に関するアラスカ・センター(ACCAP)のリック・トーマン(Rick Thoman)氏によれば、2月と3月は異例の暖かさで、多くの地点で観測史上最も暖かい3月になるとみられている。同氏はAFPに「3月の気候が今や4月か5月並みになっている」と語った。

 この暖かさは今週末も続き、ウェインライト(Wainwright)やナイーキュース(Nuiqsut)、カクトビク(Kaktovik)、ウトキアグビク(Utqiagvik、旧バローBarrow)を含むアラスカ州の北半分の市や町の気温は、平年を上回る14~22度と予想されているという。

 トーマン氏によれば、この暖かさは4月いっぱい続く見通しで、アラスカ州西部では最高気温の更新が予想されている。

■カニ漁、アザラシの生息数にも影響

 海氷の減少や北極海の水温上昇など、アラスカ州で近年急速に進んでいる温暖化は、同州の地域社会や経済、野生生物にも打撃を与えている。

 今年は多くの犬ぞりレースが中止を余儀なくされ、有名なアイディタロッド犬ぞりレース(Iditarod Trail Sled Dog Race)も、例年なら硬く凍っている海氷が解けているため、コースを変更する事態となった。

 カニ漁にも影響が出ている。地域によっては、漁師が作業の足場にする海氷が張っていないか、氷が十分な厚みに足りていない。また、トーマン氏によると、一部の種類のアザラシはしっかりと張った氷の上で出産するため、今後数か月間で生息数に影響が出るとみられている。

 米海洋大気局(NOAA)のアラスカ担当地域調整官、エイミー・ホルマン(Amy Holman)氏によると、この暖かさは、交通にも重大な影響をもたらしている。同氏によれば、冬場は、凍結した川が集落をつなぐ主要な交通路となるが、平年を上回る気温によってトラックや車が安全に走行できないほど川の氷が解け出し、アラスカの集落の3分の2に車で行けなくなっている。

 北極海につながるベーリング海(Bering Sea)の海氷が、記録を開始した1850年以降で最少となった原因は地球温暖化だとトーマン氏は指摘する。

 トーマン氏は、「私が最も懸念しているのは変化のスピードと、それにうまく対処していくことができるかどうかという点だ」と話し、「アラスカの人々は変化に柔軟で、わが州固有の文化は1万年前から存在する。だが、こんなペースで起きる変化は前例がない」と警鐘を鳴らした。(c)AFP/Jocelyne ZABLIT