【3月29日 AFP】米航空宇宙局(NASA)の無人探査機カッシーニ(Cassini)は2017年、土星の輪の隙間にある複数の小型衛星にフライバイ(接近通過)観測を行った。

 米国、英国、ドイツ、イタリアの天文学者と科学者ら約40人からなる研究チームは28日、これらの小型衛星に関するカッシーニの観測結果をまとめた初の研究論文を米科学誌サイエンス(Science)に発表した。

 観測対象となった衛星は、パン(Pan)、ダフニス(Daphnis)、アトラス(Atlas)、パンドラ(Pandora)、エピメテウス(Epimetheus)。それぞれの直径は8~116キロで、円形で空飛ぶ円盤のような形をしているか、ジャガイモに似た形をしている。これらの衛星は、複数ある輪の間の隙間に存在している。

 カッシーニは土星の近くに13年間滞在した。打ち上げから20年となった運用の最終年には、土星と輪の間に突入する探査を実施。2017年9月13日まで観測データを地球に送信し続けた。

 カッシーニの観測結果に関して発表された科学論文は約4000に上るが、知識の源泉が枯れるのはまだまだ先のことだろう。NASAジェット推進研究所(JPL)の惑星天文学者ボニー・ブラッティ(Bonnie Buratti)氏は、AFPの取材に対し「このテーマに関する研究を少なくともあと10年は続けたい」と語った。

 カッシーニが捉えた観測データはまだ分析が行われている段階だ。今回発表された研究は、これから明らかにされる発見の数々の予告編の一つにすぎない。

 ただ、今回の研究では、土星の輪と衛星が同じ天体に由来するものであるという説が裏付けられた。天体が何らかの衝突で粉々になった結果として輪ができたとする、今では主流の説だ。

 研究歴33年のNASAのベテラン科学者であるブラッティ氏は、「輪の中にある衛星は、最大級の破片がそれぞれの核となった」と説明し、「その後、衛星は土星の輪の粒子を集積し続けた。輪の構成物質が衛星上に蓄積されているのを近接観測で確認している」と続けた。

 衛星の軌道に何もない空間が残されるのも、これで説明がつくと考えられる。

■いつ形成されたのか

 天文学者らを悩ませている問題は、土星の輪の年齢、すなわちどれくらい前に形成されたかを明らかにすることだ。

 1月に発表された、カッシーニのデータに基づく論文では、土星の輪は比較的若く、年齢が1億年~10億年の範囲に収まると結論付けられている。だが、別のモデルや手法では、異なる答えが示唆されているのだ。

「科学はすでに決着のついたものでは決してない。最終的な答えなど得られるものではない」と、ブラッティ氏は話した。(c)AFP