【3月29日 AFP】インドの対衛星破壊兵器実験によって無数の「宇宙ごみ」が発生したことで、既存の宇宙大国が長年にわたって回避しようとしてきた危険な状況が生じる恐れがある。

 インドは27日、衛星をミサイルで破壊する実験を行ったが、周回軌道衛星への脅威を最小限にとどめるべく尽力してきた。

 専門家によると、インドの実験は国際法などに抵触するものではないという。ネブラスカ大学リンカーン校(University of Nebraska-Lincoln)のフランス・フォンダーダンク(Frans von der Dunk)教授(宇宙法)は、「あいにく、宇宙ごみをむやみに生み出すことを禁じる国際的な法的ルールは(今のところ)存在しない」と説明した。

 一方、1967年に発効した宇宙条約(Outer Space Treaty)では、自国の実験が他国の衛星運用に有害な干渉を及ぼす恐れがある場合には通告しなければならないとしており、厳密に言うとインドの実験はこの義務に反するという。

 フォンダーダンク氏は、宇宙ごみを生み出す活動を控えるのが慣習国際法の義務だとする傾向が強まりつつあり、今回インドが実施したような実験はこの趨勢(すうせい)とますます合わなくなっていく、と指摘した。

 2002年以降、世界の宇宙大国は宇宙ごみの発生を回避するための非公式な行動規範をまとめ、国連(UN)もその線に沿った決議案を採択した。

 インドのナレンドラ・モディ(Narendra Modi)首相は、国民に向かって異例の演説を行い、高度約300キロで衛星を撃ち落としたと発表した。約300キロは、国際宇宙ステーション(ISS)やほとんどの衛星が使用する高度410キロよりも低い。

 宇宙ごみによる危険には、地球への落下だけでなく周回軌道衛星との衝突も含まれている。たとえ極小の宇宙ごみでも高速で移動しているため、衝突すれば衛星を動作不能に陥らせる恐れがある。

 インドの実験によって発生した宇宙ごみのほとんどは、軌道上に数週間とどまるものの、地球に向かって落下し、大気圏で燃え尽きるとみられている。

 AFPが取材した専門家らは、インドが実験を行ったのが比較的低高度だったために、無事に済んだと考えている。米AGIのトム・ジョンソン(Tom Johnson)副社長は、「この高度を飛行する物はそう多くない。低すぎて抗力がとても大きいからだ」と説明した。(c)AFP/Ivan Couronne