【3月28日 AFP】(更新)米農薬大手モンサント(Monsanto)の除草剤「ラウンドアップ(Roundup)」を長年使用していたせいで喉に悪性リンパ腫を患ったとして、米カリフォルニア州の男性が同社を訴えていた裁判で、同州サンフランシスコの連邦地裁の陪審は27日、モンサント側に総額約8000万ドル(約88億円)を支払うよう命じる評決を下した。

 陪審は、ラウンドアップの危険性を警告するという「相応の注意を怠った過失」がモンサント側にあったと認定。また、製品デザインに欠陥があり、潜在的な危険性に関する警告が不十分だったと判断し、懲罰的損害賠償7500万ドル(約82億7000万円)、損害賠償506万ドル(約5億5800万円)、医療費20万ドル(約2200万円)の支払いをモンサントに命じた。

 陪審は先に、原告エドウィン・ハードマン(Edwin Hardeman)さん(70)が非ホジキンリンパ腫を発症したのは、四半世紀にわたってラウンドアップにさらされたのが「事実上の要因」との評決を下していた。

 ハードマンさんの弁護団は、「モンサントがラウンドアップの発がん性の有無を気にもかけず、むしろ世論操作や懸念を指摘する人々の評判を損ねることに重点を置いてきたことは、その行動から明らかだ」と声明で指摘。「ラウンドアップの安全性やモンサントの行動を法廷で擁護しようという従業員が、今までも今も一人としていないという事実が、これを雄弁に物語っている」と述べた。

 モンサントを昨年買収したドイツ製薬大手バイエル(Bayer)にとっては、大きな敗北といえる。

 今回の訴訟をめぐり株価が急落しているバイエルは、「陪審の判断には失望したが、40年に及ぶ広範な科学と世界中の規制当局の下した結論の重みを変える評決ではない。これらはグリホサートを有効成分とするわが社の除草剤の安全性を支持し、発がん性はないとしている」との声明を発表。ハードマンさんの苦しみには同情を表明しつつ、控訴する方針を明らかにした。 

 ラウンドアップをめぐる訴訟は、米国内だけでも1万1200件以上起こされている。

 モンサント側は、ラウンドアップの発がん性を一貫して否定。世界保健機関(WHO)本部直轄の研究所「国際がん研究機関(IARC)」が2015年にラウンドアップの主成分グリホサートを「ヒトに対しておそらく発がん性がある」と分類したことにも、異議を唱えている。(c)AFP/Julie CHARPENTRAT