【3月28日 AFP】テレビ映えのする億万長者を代表に置き、不均衡な社会構造の改革と、軍部の政治への影響力の排除を訴え、流行最先端のミレニアル世代の支持を集める新未来党(Future Forward Party)が、タイの政治をにぎわしている。

 バンコクにある新未来党の本部は、24日に行われた総選挙の速報値に沸き立っていた。小選挙区での30議席と、500万票を超える得票数により比例でも数十議席増やす見込みだ。順調にいけば、結成からほぼ1年の新未来党が、第3党に躍り出ることになる。

 新未来党の政策は急進的で、軍部の政治への関与排除、軍事費の大幅削減、徴兵制の撤廃を掲げ、また格差の大きい不平等な社会の是正も訴える。

 党首のタナトーン・ジュンルンルアンキット(Thanathorn Juangroongruangkit)氏(40)は、タイの自動車部品大手サミットグループ(Thai Summit Group)の御曹司だ。AFPの取材では、長期的な視野をもって政治に臨んでいると話し、「今回の総選挙のためだけに新未来党を結成したわけではない」と述べた。

 最終目標については、タイに民主主義を取り戻すことを手助けすることだと主張している。

 取材中、新未来党のTシャツを着て、素足でおしゃれな革靴を履く若いスタッフからコップの水を受け取り、それを一気に飲み干したタナトーン氏。他のスタッフも似たような格好が多い。莫大(ばくだい)な財産を有する同氏だが、軍事政権打倒の訴えと巧みに演出された親しみやすさで支持を広く集めている。

 またその戦術は、古くさいライバルのものと全く異なっており、ツイッター(Twitter)や選挙集会で支持者たちと対話するスタイルを展開している。

 党本部では、若いスタッフが年長者に敬意を表する合掌(ワイ)をする姿はあまり見られない。これはタイでは珍しい光景だ。スタッフたちは、ワイをする代わりにノート型パソコンを忙しくたたき、支持者の総数を入力するのに忙しそうだ。

 スタッフの中には大学を卒業したばかりの若者の姿もあった。これは、既存政党が取り込めなかったミレニアル世代が、新未来党を支持しているということの表れでもある。ミレニアル世代の多くにとっては、今回が初の選挙となる。彼らは繰り返されるクーデターや短命政権、さらには政界にしがみつく高齢の軍高官や政治家であふれる政治の世界にうんざりしている。こうした現状についてタナトーン氏は、「軍事政権に賛成する人と反対する人の間に新たな分断が生じている」と指摘している。