【3月27日 AFP】人種差別と同性愛嫌悪に基づいたヘイトクライム(憎悪犯罪)の被害を捏造(ねつぞう)したとして、米テレビ俳優のジャシー・スモレット(Jussie Smollett)さん(36)が起訴された事件で、米検察当局は26日、全罪状での起訴を取り下げた。

 当局と弁護士によると、スモレットさんは同日、シカゴの裁判所に出頭し、保釈金として支払った10万ドル(約1100万円)の没収に同意。記者会見したスモレットさんは「私は1日目から、すべての面で正直かつ一貫していた」と述べた。

 検察は、世間の注目を集めて自身の報酬額を上げるためにシカゴ市内で偽の事件をでっちあげたとして、スモレットさんを16件の重罪で起訴していたが、本人は無罪を主張していた。検察は起訴取り下げの詳しい理由を明らかにしておらず、スモレットさんの刑事責任についての見解に変化があったのか、あるいは刑事責任の追及が公共の利益に資さないと判断したのかは不明。

 黒人で同性愛者のスモレットさんは、ドラマ「Empire 成功の代償(Empire)」への出演で知られる。警察は、スモレットさんが脅迫状を自分宛てに送り、知人2人を雇って自分を襲撃させて、差別的な言葉やドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領のスローガン「米国を再び偉大に」を口にするよう依頼したと発表していた。

 シカゴ警察署長と同市のラーム・エマニュエル(Rahm Emanuel)市長は緊急記者会見で、起訴取り下げの決定や無罪を主張するスモレットさんについて怒りをあらわに批判。同市長は「これは正義の隠蔽(いんぺい)だ」と述べ、大陪審が証拠の一部を確認しただけで16件の罪状での起訴を決定したことを強調した。(c)AFP