■マグロ漁から今やカネになるサメ漁に

 IUCNのサメ専門家部会は、サメ400種以上を対象とする2年間の再調査を実施中だ。

 陸の動物の場合、絶滅の脅威を評価する際に保全生物学者が着目するのは、個体群の規模と地理的範囲だ。一方、サメなどの海洋動物の場合は、個体数が減少していく早さを調べる。だが、特に外洋性の種にこうした調査を行うには特定の評価基準が必要になると、ダルビー氏は説明した。

 科学者らが評価基準を確立したのは、ほんの10年前。混獲されたサメの数を記録し始めたマグロ漁業者の協力もあって行われるようになった。

「10年前より今の状況は、これまで考えられていたよりはるかに悪化していることが今回の調査で分かった」と、ダルビー氏は述べた。

 皮肉なのは、漁業管理組織がマグロ漁獲量を監視する取り組みを強化していることで、収入増を狙ってサメを漁獲対象とする漁師が増えてきていることだ。

 インド洋の中でもアラビア海(Arabian Sea)とベンガル湾(Bay of Bengal)の沿岸部では、マグロ漁業とうたいながら、実際はマグロが混獲されるサメ漁業と化しているとダルビー氏は指摘した。

 約4億年にわたり世界中の海で君臨してきたサメは、世界規模の食物連鎖で重要な役割を果たしている。だが、最上位の捕食動物でありながら、人による捕食には特に脆弱(ぜいじゃく)であることが判明している。成長が遅く、性的に成熟するのは一生のうちの比較的遅い時期であるため、子孫をわずかしか残せないからだ。

 査読を経て発表された2013年のある論文では、ヒレ、肉、肝油などのニーズを満たすために捕獲されるサメは、年間1億匹以上に上るとされている。

 サメ専門家部会は、最新の評価結果を踏まえ、「絶滅危惧IB類」や「絶滅危惧IA類」と評価された種の水揚げの全面禁止を含む、国および国際レベルでの漁獲制限を早急に実施するよう呼び掛けていると、同部会の副議長、ソニア・フォーダム(Sonja Fordham)氏は話した。(c)AFP/Marlowe HOOD