【3月26日 AFP】今月31日に行われる大統領選挙を前に、ウクライナの首都キエフにある国家保安庁(SBU)の本部では、海外からのサイバー攻撃に備え、欧州連合(EU)との合同サイバーセキュリティー訓練が実施されている。

 約100人の専門家が参加した訓練は、ウクライナ大統領選へのロシアの介入を阻止する取り組みの一環で、ハッカー役のEUの参加者がウクライナの中央選挙管理委員会を攻撃し、ウクライナの参加者がその攻撃を無効化させるシミュレーションなどが行われた。

 SBUの職員によると、省庁など国家機関のコンピューターへの不正アクセスを試みる分散型サービス妨害(DDoS)攻撃やフィッシング攻撃が、ここ数か月増えている。SBU情報セキュリティー部門のオレクサンドル・クリムチュク(Oleksandr Klymchuk)氏は、「ロシアがサイバー攻撃を行っている」と指摘する。

 ロシアは、米国やEUで実施された選挙に介入したと非難されている。ウクライナの大統領選でも、ロシアがメディアや自動投稿を行うソーシャルボットなどを使って偽情報を拡散し、影響を与えようとするのではないかとの疑念が欧米で広がっている。

 ロシア軍参謀本部情報総局(GRU)が選挙介入の支援をしていると考えられているが、政府はハッキングや干渉を否定している。

 ウクライナ選挙対策本部(Ukrainian Election Task Force)のヤクブ・カレンスキー(Jakub Kalensky)氏は、ロシア政府は特定の候補を支援しているわけではなく、大統領選全体の信用性を傷つけようとしているとの見方を示す。

 ウクライナ選挙対策本部は、外国による選挙介入の試みを暴くために米シンクタンク「大西洋評議会(Atlantic Council)」の支援を受けて最近設立された団体で、ロシアは電力網や通信網、空港など主要インフラもサイバー攻撃の標的にする可能性があると警告する。

 ウクライナとロシアの関係は、2014年にキエフで発生した一連の抗議活動で、ロシアの支援を受けていた政権が失脚したのをきっかけにずたずたになった。ロシアは、ウクライナ南部クリミア(Crimea)半島の併合や東部の分離派を支援することによりこれに対抗した。

 この紛争では、これまでに約1万3000人が死亡している。