■土地や水めぐる争い イスラム過激派のテロも

 この地域はドゴン人の土地での遊牧や、土地や水の利用をめぐる争いで襲撃が激化しているほか、イスラム過激主義の影響も受けている。

 マリ中部は4年ほど前から、イスラム過激派の脅威が目立つようになってきた。イスラム過激派の説教師アマドゥ・クーファ(Amadou Koufa)師が率いるグループは、主にイスラム教徒のフラニ人から人員を集めている。

 ドゴン人とフラニ人の衝突が相次ぐなか、国連によると昨年は約500人の民間人が死亡した。今年1月には、同じくモプティ州バンカス圏にあるフラニ人の村コーロゴン(Koulogon)をドゴン人が襲撃し、37人が死亡する事件もあった。

 当局に自分たちの保護を強化するよう何度も求めてきたフラニ人は、当局がドゴン人による襲撃を見て見ぬふりをしたり、さらにはドゴン人にフラニ人を襲撃させたりしているとさえ非難しているが、マリ政府はそのような事実はないと否定している。

 かつてアフリカの民主主義と安定の希望といわれたマリだが、近年はクーデターや内戦、イスラム過激派のテロに悩まされている。

 2012年には国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)系の過激派がマリ北部の砂漠地帯を支配下に置いたが、2013年1月に開始されたフランス主導の軍事作戦でおおむね排除された。

 マリ政府は2015年6月に複数の反体制武装勢力と和平協定を調印したものの、その後もイスラム過激派は活動を続け、依然として国土の広い範囲が無法地帯になっている。

 国連の平和維持活動(PKO)部隊や仏軍が展開し、アフリカのサヘル5か国(G5 Sahel=ブルキナファソ、チャド、マリ、モーリタニア、ニジェール)がテロ対策特別部隊を発足させたにもかかわらず、イスラム過激派はその勢力を弱めていない。(c)AFP