【3月27日 AFP】線状の植物の組織が入った試験管が、マレーシアの研究施設の棚に並んでいる。ここはパームオイルの生産コスト削減や、パームオイル産業が引き起こす環境破壊の抑制を目指して小型のアブラヤシ(オイルパーム)を育種するプログラムの中心地だ。

 パームオイルはバイオ燃料からチョコレートまで日常生活に身近な品々の主原料となり、世界1位、2位の生産国であるインドネシアとマレーシアでは急速に生産量が増えた。ただ環境保護団体は、アブラヤシ農園(プランテーション)の急速な拡大によって先住民やオランウータンなどが暮らす森林が荒廃したと非難。長期に及ぶ環境キャンペーンの影響で、西側諸国ではパームオイルのイメージが悪化している。こうした反対運動が在庫の積み上がりや主要輸入国の需要低迷と重なり、パームオイル価格の急落を招いた。

 また、欧州議会(European Parliament)がバイオ燃料へのパームオイル使用を禁止する方向に先日動いたことで、インドネシアとマレーシアは新たな課題に直面することになった。業界団体は、数百万人に上る小規模農家の生計が大打撃を受けると主張している。

 政府機関のマレーシア・パーム油庁(MPOB)は、アブラヤシの小型品種の育種プログラムは、業界にとって頭の痛い問題を何らかの形で緩和するものと期待している。

 研究者のメイリナ・オン・アブドラ(Meilina Ong-Abdullah)さんはスランゴール(Selangor)州バンダルバルバンギ(Bandar Baru Bangi)にある研究施設でAFPに対し、「単位面積当たりの収穫量の改善で土地を最大限に活用できるようになり、パームオイル生産の持続可能性を高められる」と説明した。

 小型品種はMPOBが数十年にわたって取り組んできた研究の成果。高さは約5メートルで、域内で従来植えられていた品種の平均約7.5メートルより低い。通常の品種より約30%小ぶりで、葉も短い。

 ただ、MPOBの計画には大きな問題がある。中でも新品種の価格が相対的に高い点は、厳しい状況にある国内の大多数の農家に過大なコスト負担を与えかねない。

 環境保護団体は小型品種を前向きに評価しているものの、農園開発で既に伐採された森林を再生する取り組みを伴うべきだとしている。(c)AFP/M. Jegathesan