【3月21日 AFP】ジョン・ミルン(John Milne)さんは自宅のベッドに腰掛け、先日殺された息子サイエッド(Sayyad)さん(14)宛てに、やり場のない思いでメッセージをしたためた。サイエッドさんはニュージーランド南島クライストチャーチ(Christchurch)市内2か所のモスク(イスラム礼拝所)で15日に起きた銃乱射事件で命を落とした50人のうちの一人だ。

 事件発生後、AFPのカメラマン、アントニー・ウォレス(Anthony Wallace)が、遺族や市民、外国人旅行客に取材し、今伝えたいメッセージをホワイトボードに書いてもらった。

 ミルンさんは、どんな言葉を書こうか、しばらく考えあぐねていた。

 サイエッドさんはイングランド・プレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッド(Manchester United)で、ゴールキーパーになるのが夢だった。その夢が二度とかなわなくなった息子さんに、どんな言葉をかけたいですか?

 長いこと考えていたミルンさんは、ペンを走らせ始め、こう言った。「私は、こう言ってやりたい」

「サイエッド、サイエッド、サイエッド、勇敢なハンターの心を持つライオンよ。心優しく思いやりを持った愛しき息子よ」

 わが子の短い人生の断片があふれ出していく。

 サイエッドさんは難産だった。「かけがえのない私の息子は、この世に生まれたときから闘いを背負ってきた」「私の心には今、銃弾が貫いたより大きな穴が開いている」「私たちの愛するサイエッド。おまえを失って、みんな寂しく思っているよ。おまえがおまえでいてくれて、ありがとう」 (c)AFP/Jerome TAYLOR