【3月20日 AFP】ティピニ・ニューベリー(Tipene Newbery)さん(26)は、15日に白人至上主義者による銃乱射事件が起きたニュージーランド南島クライストチャーチ(Christchurch)のイスラム礼拝所ヌール・モスク(Al Noor Mosque)を訪れ、建物の前に花輪をささげた。そばにいた子どもたちは「お父さん、泣かないで」とニューベリーさんに声を掛けた。

 市内のモスク2か所が狙われた今回の銃乱射事件では、子どもらを含む50人が犠牲となった。遺族やクライストチャーチの市民らは、この事件がもたらした精神的ダメージから立ち直ることに苦闘している。

 市内各地には臨時の追悼場所が設けられ、子どもたちからは思いやりの言葉が記された手紙や絵が数多く寄せられている。なかでも、イスラム教徒の子どもと非イスラム教徒の子どもが、手を取り合ったり抱擁したりしている絵は特に心に響く。ある一枚の絵には「あなたたちは私の友だち。あなたがお祈りする間、私が見張っています」とつづられていた。

 ニュージーランドで2011年に発生し、住民185人の命を奪った大地震の時はまだ10代だったというニューベリーさん。今回の事件では「心がかき乱された」ことを明らかにしながら、これからは自身の子どもたち4人にとってより明るい社会環境を整えたいとAFPの取材で語った。

 また、「僕にとっては、今回の事件は地震よりもずっとたちが悪い。自然災害は避けようがないが、これは防げる類いのものだ」と説明し、「自分の中に大きな憎しみはあるが、彼ら(自分の子どもたち)の前でそれを出すことはできない。平和と愛のみ、それが唯一の方法だと示すことだ」とも話した。

 事件の衝撃は、家族に犠牲者が出たといった銃撃の影響を直接的に受けた人たち以外にも及んでいる。普段は平和なニュージーランドでこのような暴力行為が起きたことに住民らの多くはショックを隠せないでいるのだ。