【3月19日 AFP】ヒップホップは耳障りだと言う人もいるかもしれないが、スイスで最も有名なエメンタールチーズの「耳」には心地よく響いているようだ。このほど発表された実験結果によると、この穴あきチーズは熟成過程で流される音楽に応じて風味が変化することが分かった。

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 スイス・ベルン芸術大学(Bern University of the Arts)と同国西部ブルクドルフ(Burgdorf)のチーズ製造業者、ベアト・ワンフラー(Beat Wampfler)氏は、「ソニック・チーズ:音と美食の間の体験(Sonic cheese: experience between sound and gastronomy)」と題した実験を開始。チーズの細菌が起こす化学反応に音楽の音と振動がどのような影響を与えるかについての研究を行ってきた。

 ワンフラー氏が所有する19世紀の地下貯蔵室で6か月間にわたって行われた実験では、伝説的ヒップホップグループ「ア・トライブ・コールド・クエスト(A Tribe Called Quest)」や英ロックバンド「レッド・ツェッペリン(Led Zeppelin)」、オーストリアの作曲家ウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(Wolfgang Amadeus Mozart)の楽曲をかけ、スピーカーからの音と振動が直接伝わるようにしながらエメンタールチーズを熟成。対照群として、別の区画にあるエメンタールチーズは音楽から離して熟成させた。

 ベルン芸術大音楽学部の副学部長を務めるペーター・クラウト(Peter Kraut)氏は、「今回は2チームによる調査を実施した。一つは科学者ら、もう一つは料理専門家の審査員団だ」と説明。「どちらの調査チームも、チーズの精製過程で流される音楽によって味と香りに違いがあるとの結論に達した」と続けた。

 審査員団の一人でシェフのベンヤミン・ルウズイ(Benjamin Luzuy)氏は、ヒップホップを聞かせたチーズは、「マイルドでフローラルな」風味がしているが、自身のお気に入りはモーツァルトを聞かせたエメンタールチーズだとし、「クラシックの心地よい小品はチーズ向きかもしれない」と話した。

 クラウト氏はAFPの取材に、実験の最終段階ではチーズの組成に実際の相違があるかどうかを確認する生物医学的調査を行う予定だと語った。

 日中は獣医師だが、夜はエプロンを着けて熟練のチーズ職人に変身するワンフラー氏は、実験が成功し、顧客の音楽の趣味に基づいてチーズを売り出す機会を見いだせてうれしいとコメント。「すでに、バルカン(Balkan)半島の音楽やブルース、『AC/DC』(豪ハードロックバンド)の曲などを聞かせたチーズの在庫があるかどうか、電話で問い合わせが来ている」ことを明らかにした。

 映像はブルクドルフで12日撮影。(c)AFP