■イスラエル治安機関の支援も
 最近の報告によると、イスラエル占領地での不動産取引には、脅し、偽造文書、裏の手口を使うことが一般的になっているという。2016年にイスラエルの民放チャンネル10(Channel 10)が行った調査で、入植関連企業アマナ(Amana)がパレスチナ人から取得した不動産15か所のうち、14か所が詐欺によるものだったことが分かった。

 イスラエルの日刊紙ハーレツ(Haaretz)の行った調査で、入植関連企業が土地を獲得するために使っていた具体的な手口が明らかになっている。ヨルダン川西岸ラマラ(Ramallah)でイスラエルが土地を探す時にはいつでも、入植を推進する活動家ゼーブ・へベル(Ze’ev Hever)氏が経営し、アマナが所有する企業アルワタン(Al-Watan)が、パレスチナ人の所有者から地元の土地を購入したと表向きには言っていた。

 だが、実際には、アルワタンの代理となっていたパレスチナ人が偽造文書を使って、本当の土地所有者に異議を申し立てて不動産を購入し、アマタに引き渡していたと、ハーレツは報じている。

 ラマラ地区シルワド(Silwad)村の元村長アブドル・ラフマン・サレハ(Abdel Rahman Saleh)氏(71)はMEEの取材に対し、アルワタンやスカンジナビアン・シーメン・ホーリーランド・エンタープライズのような企業は、市場価格が2000ディナール(約31万5000円)の土地を、1ドナム(1ドナム=1000平方メートル)最高6万ディナール(約940万円)で購入していると話す。

 サレハ氏によると、入植関連団体はイスラエルの治安機関シンベト(Shin Bet)と協力し、土地購入で使う偽造文書を作成しているという。

「入植者たちに要請され、イスラエルの情報機関は、土地や所有者、所有者の身分証の番号などの情報収集を手伝っている」とサレハ氏は語る。「入植者はこれらの詳細情報を偽造文書に盛り込み、まるで私たちが彼らに土地を売ったかのように見せかける」

 グッシュ・エツィオンのすぐ南に住むアブ・スルールさんの家族は、この地に住み続けるには、長い闘いに立ち向かわなければいけないのではないかと懸念している。入植者や兵士は、いまや自分たちの主張を通すために脅しや暴力を使っている。アブ・スルールさんは、入植者が他で使ったのと同じような裏の手口や不正な手段を使って、自宅を奪うのではないかと心配している。

「このようなことが起こらないように、この家は慎重に手配して購入した」とアブ・スルールさんは説明する。「だが、相手は入植者だ。彼らはイスラエル軍や裁判所、政治家などを味方につけている。制度全体が入植者側についている」

By Akram Al-Waara

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