【3月18日 AFP】フィリピンは17日、国際刑事裁判所(ICC)から正式に脱退した。ロドリゴ・ドゥテルテ(Rodrigo Duterte)大統領の推進する麻薬撲滅戦争をめぐってICCが予備調査を開始したことを受けての対応だ。ただ、ICCは違法な殺人が横行している疑惑の調査を続行する方針を示している。

 フィリピンのICC脱退は、ICCの設立条約「ローマ規程(Rome Statute)」に基づき、昨年3月にドゥテルテ大統領が国連(UN)に脱退を通告してからちょうど1年後の17日に発効した。

 これに先立ち、金子絵里(Eri Kaneko)国連報道官は15日、AFPに「国連事務総長は(中略)全関係国に、フィリピンの脱退が3月17日に発効すると通達した」と述べていた。

 戦争犯罪を裁く世界唯一の常設裁判所であるICCは、ドゥテルテ大統領の麻薬撲滅戦争で多数の死者が出ており、国際的な批判が高まったことを受け、昨年2月に予備調査を開始。フィリピン政府はこれに反発し、脱退を表明していた。

 ただし、ICCは麻薬撲滅戦争において「人道に対する罪」があったかどうかをめぐるファトゥ・ベンスダ(Fatou Bensouda)ICC主任検察官の予備調査は続行されると表明している。ローマ規程では、締約国の脱退発効前にICCで審議されていた問題は全て、脱退後もICCが司法権を有する。

 一方、フィリピン大統領府のサルバドール・パネロ(Salvador Panelo)報道官は17日、「フィリピンがローマ規程の締約国だったことはない」と述べ、批准過程を完了していなかったとの立場を強調。ICCは「実在しない法廷であり、その行動は無益だ」と主張した。ドゥテルテ大統領はすでに、ICCの調査には一切協力しない姿勢を明らかにしている。

 ICCをめぐっては近年、脱退の動きが広がっているほか、予想外の無罪評決・判決が下されるなど、逆風が吹いている。2017年にアフリカ中部ブルンジが世界で初めてICCから脱退した後、ザンビアや南アフリカ、ケニア、ガンビアなどアフリカ諸国が、アフリカ人への偏見があるとして脱退の意向を表明している。(c)AFP