【3月17日 AFP】ニュージーランド南島のクライストチャーチ(Christchurch)で15日に発生したモスク(イスラム礼拝所)の銃乱射事件で、銃撃犯の男が捨てた空のライフルを拾って銃撃犯に立ち向かい、退散させた勇敢な信者がいたとの生存者男性の証言を、地元メディアが伝えた。

 白人至上主義者を自称するブレントン・タラント(Brenton Tarrant)容疑者が一つ目のモスク襲撃を終えてリンウッド(Linwood)モスクに現れた時、アラビ・ラティーフ(Alabi Lateef)さんは他の信徒らと礼拝で祈りをささげていた。ニュージーランドのニュースサイト「スタッフ(Stuff)」によると、銃声を耳にしたラティーフさんはすぐに祈りを中断。窓から外を見ると、マシンガンを手にした重装備姿の人物がいた。「床に目をやると、既に2、3人が死んでいた。その時、これは異常事態に違いない、テロリストの襲撃だと悟った」

 ラティーフさんは礼拝の参列者たちに身をかがめるよう指示し、銃撃が途切れた隙に信者の男性1人と共に銃撃犯に立ち向かおうと決意した。この信者男性がモスクの外に飛び出していくと、銃撃はやんでいた。2人はタラント容疑者が弾が切れたライフルを放置して車に戻ろうとしていると気付いた。信者男性は空になったライフルを拾ってタラント容疑者を追い掛けた。男性が手にしていたライフルでタラント容疑者が乗り込んだ車の後部ガラスをたたき割ると、タラント容疑者は車で逃げ去ったという。
 
 それから間もなく、タラント容疑者はリンウッドモスクからそう遠くない場所で武装警官2人に身柄を取り押さえられた。ラティーフさんと信者男性の勇気ある行動が、被害の拡大を防いだと言えるだろう。タラント容疑者が運転していた車は、後部ガラスが激しく割れていたという。信者男性は、タラント容疑者が逃げ去るとすぐにモスク内に戻り、銃撃で負傷した人たちの救助に当たった。

 ラティーフさんは「こんな事件が起きて非常に悲しい。それでもニュージーランドは平和な国だと信じている。これからは良いことがあると願っている」と、涙をこらえながらスタッフに語った。(c)AFP