■出生異常

 状況があまりに悪いため、唯一の選択肢は、都市部ではなく空気がきれいな地域に娘を移すことだと、医師らはナランチメグさんに伝えた。

 現在5歳になり、すくすくと成長しているアミナちゃんは、ウランバートルから135キロ離れたボルヌールソム(Bornuur Sum)村で祖父母と暮らしている。

「娘はここで暮らし始めてからずっと健康でいる」と話すナランチメグさんは毎週、往復3時間かけて娘に会いに行っているという。そして、「最初の数か月はとても苦しかった」「娘とはよく電話で話しては泣いていたものだ」とこれまでのことを振り返った。

 ウランバートルに住む多くの親たちと同様に、ナランチメグさんは地方部への転居が自分の子どもを守る唯一の手段だと感じている。

 ウランバートルでは1月、有害な微小粒子状物質「PM2.5」の大気中濃度が1立方メートル当たり3320マイクログラムに達した。これはWHOが安全とみなす値の133倍に相当する。

 PM2.5は大人にとっても恐ろしい影響をもたらすが、子どもはさらに大きな危険にさらされる。その理由の一つに、子どもは呼吸のペースが速く、より多くの空気と汚染物質を取り込むことが挙げられる。

 また、子どもは大人より体が小さく、一部の汚染物質が集まる地面により近い上、肺、脳や他の主要な臓器がまだ発達段階にあるため、大人より損傷を受けやすい。

 PM2.5への長期暴露の影響は、持続感染症やぜんそくから、肺や脳の発達の遅れにまで及ぶ。

 これらの危険は子宮にも及ぶ。ガスや微粒子が母親の血流や胎盤に入り込み、流産や出生異常、低出生体重などを引き起こす可能性があるからだ。これらの問題が子どものその後の人生に影響を与えることも考えられる。

 研究者らは現在、たばこの煙への暴露といった汚染が、次の世代の健康にも影響を与え得るのかどうかについて調査を進めている。