【4月4日 AFP】うつ病との闘いを告白するというラグビー界最大のタブーを破ったことで知られる元ニュージーランド代表のジョン・カーワン(John Kirwan)氏は、競技がプロ化された中でプレーしている現代の選手たちが、かつてないほど精神的重圧にさらされていると確信している。

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 アマチュア時代が終わりを告げようとしていたラグビーで現役時代にウイングとしてプレーしていたカーワン氏は、オールブラックス(All Blacks、ニュージーランド代表の愛称)では1987年のW杯(Rugby World Cup)優勝と4年間にわたる母国の無敗記録の樹立に貢献した。しかし、当時はスポーツ心理学者は存在せず、選手たちはアルコールに頼るなど、勝手な「自己治療」を行っていた。

 内なる悪魔との闘いに関して二冊の体験記を執筆しているカーワン氏は、1990年代半ばからラグビー界が劇的に変化を遂げたことによって、選手たちが新たな重荷を背負うようになったと指摘しており、AFPの電話インタビューに対して、「当時を振り返ると、われわれには他に仕事があって、ラグビーは楽しい娯楽の要素が大きかった。プレーするのは本当に素晴らしい時間だった」と述べた。

「プロスポーツ選手でいることで、今は物事が前よりも複雑になっている。より大きく、より強く、より速くなり、私がプレーしていた頃の競技とはまるで違う」

 自転車トラック競技では先日、女子米国代表でうつ病に悩んでいた23歳のケリー・カトリン(Kelly Catlin)選手が自殺するという事件が起きた。同選手は数か月前、転倒して脳振とうを起こしていたという。

 一連の研究結果や米ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)の訴訟問題などを受け、ラグビーを含めた現在のスポーツ界では、脳振とうが長期にわたって精神衛生に影響を及ぼすことが認識されている。

 アマチュア時代のラグビーでは軽くあしらわれていた負傷が、現代では経済的にも身体的にも深刻な問題を引き起こしており、カーワン氏は選手の日常生活が一夜にして損なわれてしまう可能性があると訴えた。その一方で、専門家による徹底調査によって、メンタルヘルスに関する新たな知識が広がり、一流アスリートが直面する独特の重圧への理解にもつながっていると付け加えた。