■ホッキョクグマの安全を脅かす軍施設を批判して解雇

 ノバヤゼムリャ列島は旧ソ連時代、核兵器の実験場とされていたため立ち入りが制限されている。だが、最近になってロシア軍が施設や飛行場を建設。近くのパブロフスコエ(Pavlovskoye)では、広大な鉛・亜鉛鉱山の採掘計画も進められている。昨年には、軍警察の新たな部隊がベルーシャグバ村に派遣されたことで、家族など軍関係者を含めた2000人以上がこの地に移り住み、学校や大型スポーツ施設などもできている。

 ロシア政府は2014年、北極圏を軍の戦略的要衝として発表。翌年、生物学者のコチネフ氏はブログに感情的な投稿をした。軍施設の建設現場近くでホッキョクグマが爆発物をのみ込む事件があったからだ。新基地を批判した同氏は、それまで勤めていた国立公園の職を解雇された。

 コチネフ氏は、ホッキョクグマの対処について、現在は、いかに撃退するかばかりに重点が置かれているが、接触自体をなくす方向で施設を整備する方が優先されるべきだと訴える。そして、北極圏の開発者への助言として、「おりの中に自分たちが入るような形を取り、クマたちを自由に移動させるべきだ」と話した。

 コチネフ氏はまた、政府による北航路の開発計画も、ホッキョクグマにとって問題だと指摘した。ホッキョクグマが餌とする「アザラシの繁殖地で砕氷船が常に稼働していると、アザラシの生息数にも影響するから」だ。