【3月13日 AFP】世界各地での早死にや疾病の4分の1は、人為的な汚染や環境被害が原因だとする報告を、国連(UN)が13日、発表した。

 世界70か国、250人の科学者らが6年をかけて作成した報告書「グローバル環境概観(Global Environment Outlook)」は、スモッグを発生させる汚染物質の排出や飲料水を汚染する化学物質、数十億人の生活に不可欠な生態系の破壊の加速などについて警告。富裕国と貧困国の隔たりがいっそう広がっているとし、先進国の過剰消費や汚染、食品廃棄が、その他の世界の飢餓や貧困、疾病を引き起こしていると指摘した。

■汚染による緊急事態を列挙

 同報告書は汚染が関与している健康に関する緊急事態を列挙。これによると、「世界の疾病・失命の約25%を引き起こしている」のは劣悪な環境で、2015年だけでも約900万人の死因となっている。

 また清潔な飲料水を入手できないことによって毎年約140万人が、病原菌に汚染された水や不衛生に起因する下痢や寄生虫病といった予防可能な病気が原因で死亡している。

 海水に流入している化学物質は「おそらく数世代に及ぶ」健康被害を引き起こしており、一方、世界人口のうち約32億人が暮らす地域で、大規模農業や森林伐採が土地の劣化を招いている。また大気汚染による早死には、毎年600万~700万件に上っているという。

 さらに食料生産の過程で規制なく抗生物質が使用されていることで、抗生物質が効かない「スーパー耐性菌」が目につくようになり、21世紀半ばには早死にの原因のトップとなるだろうとも予測している。

■人間の営みを「抜本的に変える」

 同報告書は、現在の状況を覆すことは不可能ではないと強調し、人間の営みの抜本的な無害化を呼び掛けている。

 例えば、世界で排出される温室効果ガスの9%の原因となっている食品廃棄は減らすことが可能だ。現在、世界では生産された全食料の3分の1が廃棄されている。富裕国では実に食品の56%が廃棄されており、これが世界全体の食品廃棄量を押し上げている。

 報告書の共同編さん者、ジョイータ・グプタ(Joyeeta Gupta)氏は「2050年までに(さらに)10億人の食料を確保しなければと皆言っているが、それは生産量を倍増させなければということではない」と指摘する。「われわれが無駄遣いを減らし、さらにおそらく肉の消費を減らせば、たぶん直ちに問題を縮小できるだろう」。さらにグプタ氏は「それは、われわれ(人間)の生き方を変えることが求められる」と述べた。(c)AFP/Patrick GALEY