【3月19日 AFP】北朝鮮の首都・平壌では平日の毎朝、赤い旗を手にした女性たちが市内の主要な場所に繰り出し、横断幕を掲げて、国家と金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-Un)朝鮮労働党委員長をたたえる愛国的な音楽に合わせて赤い太鼓を打ち鳴らす。このパフォーマンスは最長1時間続く。

 女性たちが派遣されるのは、柳京ホテル(Ryugyong Hotel)や主要駅など、市内の主だった場所だ。グループごとに制服は異なるが、装備はほとんど同じだ。

 流れるような規律正しい動き。女性たちのパフォーマンスは、市民の勤労意欲を押し上げるために行われる。

「私たちがこのプロパガンダを行うのは、元帥(金委員長)に幸せを届けたいからです」。今月9日、パフォーマンス終了後に柳京ホテルの外でAFPの取材に応えたキム・チュニ(Kim Chun Hui)さん(47)はこう話した。キムさんは2人の息子がいる主婦だ。

「私たちは、仕事に精を出してもらうために市民にエールを送っているんです」「ですから疲れることはありません。非常に名誉なことで、私たちの義務だと思ってやっています」と、キムさんは語った。

 こうしたパフォーマンスが行われるようになったのは、北朝鮮政府が2016年に発表した二つの大増産運動「70日戦闘」と「200日戦闘」以降だ。二つの「戦闘」はずっと前に終了しているが、この旗振り運動──正式名称は「ラッシュアワーにおける朝鮮社会主義女性同盟(Socialist Women's Union)メンバーによるアジテーション活動」──は今も変わらず週に6日、行われている。

 朝鮮社会主義女性同盟は、市民生活を厳格に統制している北朝鮮政府が主婦を組織化している公的機関で、旗振り運動はその活動の一環だ。メンバーは全員、非就業者の女性で、大半は30~50代。北朝鮮の女性は20代のうちは就業を課されるが、多くが結婚・出産を機に正規職から離れる。(c)AFP/Sebastien BERGER