【3月17日 AFP】金の十字架を頂く伝統的な正教会の礼拝堂に入ると、訪問者の目に入るのは聖像ではなく、月面車と初の有人宇宙飛行を果たしたユーリ・ガガーリン(Yuri Gagarin)飛行士のヘルメットだ。

 ウクライナ中部にあるこの木造の建物は、1891年に建てられた聖パラスケバ(Saint Paraskeva)教会。旧ソ連時代には反宗教運動の中で、何千という教会が転用されたり、取り壊されたりした。

 だが、信者らの一部は今日、とりわけウクライナで宗教復興が進みつつあるなかにおいて、この青とグレーの建物は正教会に返還すべきではないのかとの疑問を抱き始めている。

 これまでに死者1万人以上を出しているウクライナ東部での親ロシア派勢力との衝突を背景に、ウクライナは先ごろ、ロシア正教会との歴史的決別を果たし、独自の正教会を発足した。

 博物館近辺にある、新ウクライナ正教会の一つに仕えるミハイロ・ユーチェンコ(Mykhaylo Yurchenko)司祭は、「今日、神を信じ、祈ることはもはや禁じられることではなくなった。あの教会は礼拝所として使用されるべきだ」と語る。だが博物館の職員らによると、聖職者らが施設を訪れて音響などについて調べてはいるものの、再び教会に戻す計画はないという。

 この博物館は、ウクライナの首都キエフの南東約80キロに位置する小さな町ペレヤースラウフメリヌィーツィクィイ(Pereyaslav-Khmelnytsky)にある広大な屋外民族博物館群の一部だ。館長のセルヒー・ボルコダフ(Sergiy Volkodav)氏(37)によると、博物館として開設されたのは宇宙飛行がブームとなった1970年代だという。

 収蔵品は450点を超え、1961年の歴史的宇宙飛行でソ連の象徴となったガガーリン飛行士の真紅の訓練用パラシュートや写真、身の回りの品も含まれている。