【3月8日 AFP】米国内で販売されている魚介類は、20%の割合で食品ラベルに表示された名称と内容物が異なっている恐れがあり、水産物の生産・流通過程を通じて食品表示偽装が横行している疑いがあるとの報告書が7日、発表された。

 海洋保護団体「オセアナ(Oceana)」は、全米数百か所の市場や飲食店から魚介類のサンプルを抽出。2018年3月~8月に25州で購入された449匹をDNA分析にかけ、全体の21%に相当する94匹で表示が誤っていたことを発見した。

 調査では、米政府が昨年導入した輸入魚介類13種の追跡(トレーサビリティ)プログラムでは対象とならなかったものに注目した。このプログラムが対象とするサケ、タラ、ブルークラブ(アオガニ)、ハタなどは、オセアナの前回調査で偽装表示が多く見つかった魚介類だ。

 今回の報告書によると、高価な魚になるほど表示が不正確な確率も高かった。

 例えば、21種もの魚の総称として使われる「シーバス」とラベル表示された魚のうち、半数以上は別の魚で、ホワイトバスとストライプトバス(シマスズキ)の交雑種パルメットバスや、バラマンディなどだった。また、首都ワシントンのあるレストランでシーバスとして提供されていた魚が、ずっと安価なナイルティラピア(チカダイ)だった例もあった。

 環境保護活動家らは、魚介類の名称の正確なラベル表示が絶滅の危機にある種を特定する際にカギとなるとして、偽装表示は重大な問題だと指摘する。

 今回の調査でも、タイヘイヨウオヒョウやアラスカオヒョウと表示されていた魚の多くが、実際は国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで「絶滅危惧IB類(EN)」に指定されているタイセイヨウオヒョウだったことが分かった。

 やはりシーバスとして売られていることの多いマジェランアイナメ(メロ)も、生息域の南極海で乱獲が問題となっているという。

 地魚を好む人々に付け込んだビジネスだと報告書は指摘している。表示を偽装しがちなのは、魚介類の輸入販売に厳しい基準を設けていることの多いスーパーマーケットよりも、飲食店や小規模な鮮魚店だという。

 オセアナは対策として、米国内で販売される全ての魚介類を追跡対象とする規制の導入や、シーバスなど保護基準のまちまちな種を内包する総称の廃止などを呼び掛けている。(c)AFP/Ivan Couronne