【3月7日 AFP】北極圏に生息するワモンアザラシとシロイルカ(ベルーガ)が、気候変動による生息環境の変化に伴い摂食パターンを変えていることが、最新の研究で明らかになった。また、摂食パターンをどのように変えたかということが、これらの動物の生存を左右する可能性もあるという。

 研究チームは20年にわたり蓄積したデータを利用し、シロイルカとワモンアザラシが生息環境の変化にどのように適応しているかを調べた。

 研究で着目したノルウェー北西沖スバルバル(Svalbard)諸島周辺の海域は、気候変動、特に「2006年に発生し、現在まで続いている海氷の大規模な崩壊」による急激な影響が及んでいると、研究を率いたノルウェー北極研究所(Norwegian Polar Institute)のチャーメイン・ハミルトン(Charmain Hamilton)氏は説明する。

「この崩壊が発生する前から、基本的な生態調査のため、スバルバルに生息するシロイルカとワモンアザラシにタグを取り付けていた。海氷崩壊が発生した後に繰り返し標本抽出を行っていたことが、自然実験の機会をもたらした」と、ハミルトン氏は続けた。

 シロイルカもワモンアザラシも従来、海氷がある海域、特に氷河が海と接するいわゆる潮間氷河の先端部で餌を探す。

 ノルウェーの研究チームは、気候変動により海氷が融解し、氷河の後退が進んでいる状況を受け、影響を受けている海域に生息する動物がどのように適応しているのかを調査することにした。

 研究チームは6日に英国王立協会(Royal Society)の専門誌バイオロジー・レターズ(Biology Letters)に掲載された論文で、「北極圏は気候変動の影響を顕著に表す指標だ」と述べた。

 研究チームは「変化の速度が急なため遺伝的適応が不可能な状況」においては、行動と食性の変化が「生態系内で最初に観測できる反応となる」と推論。シロイルカとワモンアザラシに取り付けた追跡タグから蓄積したデータを比較した。