【3月9日 Xinhua News】スマートフォンの音声認証や人間の棋士を「敬服させた」AlphaGo(アルファ碁)などのように、人工知能(AI)は人類の芸術世界にも進出することができるのだろうか。

 このほど、中国北京市の798芸術区にあるユーレンス現代芸術センター(UCCA)で開催された「邱志傑(Qiu Zhijie):寰宇(かんう)全図」展では、展示ホールの中央に1台の特別なコンピューターが設置されていた。

 このコンピューターは観客が話しかけると、中央美術学院実験芸術学院の邱志傑教授の芸術スタイルを持つ「作品」を即興で生み出すことができる。「北京」という言葉を聞き取ると、ディスプレイ上に「糖葫蘆(サンザシあめ、北京のポピュラーなお菓子)」や「鳥の巣(北京五輪会場)」などの単語が表示される。「教室」という言葉を聞き取ると、コンピューターは「勉強」だけでなく、人気児童小説「ハリー・ポッター」に登場するホグワーツ魔法学校を連想したと観客に「教えて」くれる。

 「トレーニング」を経たこのコンピューターは、インタラクティブな人工知能(AI)ソフトウエアを備えており、芸術家の思考パターンに基づき、観客が口にした言葉を山水や建築物、キーワード、概念を組み合わせた「マインドマップ」として表現する。

 「AIは芸術家のツールであるだけでなく、人々が創作に参加し、作品を鑑賞し、芸術に浸るための新たな手段になっている」と邱氏は話す。

 AlphaGoが李世石(イ・セドル)氏に勝利したことから、初めてAIによって描かれた肖像画が数十万ドル(1ドル=約112円)の高値で落札されたことにいたるまで、現在AIはゆっくりと自らの「創造力」を高めつつある。

 中国の多くの芸術分野では、AIの姿を見ることが珍しくなくなっている。「AIたち」は詩を書くことで自己表現が下手な「理系男子」の悩みを解決するだけでなく、音楽業界にも進出し、作曲や編曲に挑戦している。

 中国電子商取引(EC)大手、京東集団(JDドットコム)のAI研究院の何暁東(Chen Xiaodong)常務副院長は以前、チームリーダーとしてAIを使い、写実的で繊細な鳥類の絵画作品を6枚制作した。実際にこれらの作品を見ると、人間によって描かれたのか、AIによって描かれたのかを判別するのは難しい。

 科学技術は創作を「簡単」にした。何氏は、すべての芸術家には一定の個人スタイルがあり、AIはこれに基づいて表象空間を調整し、サンプリングを行ってモデルを生成し、芸術家の思想が反映された作品をつくりだすことができると話す。

 科学技術は芸術家を助けると同時に知識と芸術を日常的で一般的なものに変えている。「AIは多くの人に芸術と創作の素晴らしさを味わわせることができる。鳥を描きたいと思い、絵筆を持ったとしても描くことは難しい。ある意味で、AIはこうした人々の夢をかなえてくれるのだ」と何氏は語る。

 とはいえ、こうした科学技術が芸術家の「飯のタネ」を奪ってしまうのではないか、あるいは、本来の創造力を失わせるのではないかと懸念する人々もいる。邱氏は、科学技術の発展は自身の作品に対する絶え間ないリニューアルを芸術家たちに求めることになり、芸術の進化を促進すると考えている。

 科学技術の発展は一種の芸術解放運動であると考えている邱氏は、「実験精神を持つ芸術家は勇気をもって技術を取り入れるとともに、技術をヒューマニズムに合致するシチュエーションで使用するべきだ。これこそポジティブな姿勢だ」と話す。

 科学技術と芸術がいかにしてより輝かしい「火花」を放つかについて、邱氏は次のように語った。科学イノベーションと芸術の革新には重なり合い、混ざり合っている部分があり、両者はどちらも世界の構造に内在する秘密を解き明かそうとしている。「芸術と科学はいつもその山の頂で巡り合う」と言う人がいたが、わたしは芸術と科学は実際のところ別々に発展したことは一度もないと考えている。(c)Xinhua News/AFPBB News