【2月27日 AFP】ロシア・シベリア(Siberia)の工業都市ケメロボ(Kemerovo)で、大気中に放出された石炭の微粒子によって黒く変色した雪が降り積もった。現地の州知事は26日、地元の石炭処理工場が「住民を殺しつつある」として、工場の一時閉鎖を命じた。

「黒い雪」は今月に入り、首都モスクワから東に3000キロ以上離れたケメロボの3か所で観測された。住民らはソーシャルメディアに、黒や灰色の雪が積もった車や建物の写真を投稿。中にはまるで英作家J・R・R・トールキン(J.R.R. Tolkien)のファンタジー小説「ロード・オブ・ザ・リング(指輪物語、The Lord of the Rings)」に登場する「モルドール(Mordor)」という恐ろしい国のようだとコメントする人もいた。

「黒い雪」の降った街の一つ、キセレフスク(Kiselyovsk)に住むインターネット新聞の編集者(42)は、「周りのすべてが黒ずんでいると、気分が落ち込むし、健康にも非常に悪いと思う」と述べた。また雪は4月末まで残留する可能性が高いと指摘し、「子どもたちは外で遊べない」と訴えた。

 警察は、分析結果から大気汚染のレベルが安全基準の2倍を超えていることが判明したため、キセレフスクの環境汚染について捜査を開始したという。

 キセレフスクにある石炭処理工場に汚染原因があるとみて調査した検察当局は、チェルカソフスカヤ(Cherkasovskaya)石炭処理工場が「長期的かつ組織的」に大気汚染規定に違反していたことを突き止めた。石炭の微粒子を含む排気をまったくフィルターを通さずに大気中に放出していたとみられる。

「黒い雪」が降った地域は、世界でも最大規模のクズバス(Kuzbass)炭田の一部で、環境汚染度の高い冶金(やきん)工場も多数立地している。(c)AFP