■「いつか世界で見せたい」

 フメイドさんはソーシャルメディア上で、地元だけでなく外国からもフォロワーを集めている。ハンクレー(Hanklay)という日本人のオリガミアーティストもその一人で、フメイドさんの作品を高く評価し、励ましたりアドバイスを与えてくれたりもしているという。

 フメイドさんはこう説明する。「俺が編み出したオリガミの新しいスタイル、日本で生まれ、欧州でもよく知られているオリガミで、アラビア文字を浮かび上がらせるっていうスタイルが、彼の関心を引いたらしいんです」「すぐに、日本で一緒に展示会をやらないかと誘ってくれました。彼が日本語、俺がアラビア語の作品を出品しようって。だけど、やはり国境が障害になっています」

 ガザ地区では、2006年のパレスチナ評議会選挙でイスラム原理主義組織ハマス(Hamas)が勝利して以来、イスラエルが封鎖を続けており、住民の出入りが厳しく制限されている。一方、エジプトも、ガザ地区との境界のラファ(Rafah)で検問を実施している。

「自分が成し遂げたことに誇りを持っている人は誰でもそうでしょうが、俺も世界中を回って自分の才能を知ってもらいたいと思っています。国を代表するような存在になりたいし、ここまで来るまでに自分が経験しなくてはならなかった試練について話したい。だけど、今はただ単に移動できないんです」

「(ヨルダン川)西岸(West Bank)やエルサレム(Jerusalem)でもたくさんの人が俺の作品を見てくれていて、特注品を作ってもらうことはできますかと相談されることもあります」「俺は、残念ですが、お受けできませんと返信しています。(イスラエルとの境界の)エレツ(Erez)、ラファの両方の境界で移動が制限されているから、注文を受けても作品を届けられないんです」

 それでもフメイドさんは、いつか個展を開き、パレスチナという国を代表して活動するという希望を捨てていない。

「苦労してここまでやってきたのに、ここで自分の才能を無駄にするようなまねはできない。境界が封鎖されているっていうのなら、ここガザ地区で個展をやるまでです。俺のアートは、そうした苦難を反映したものになっていくでしょう」

By Maha Hussaini

(c)Middle East Eye 2019/AFPBB News