■一人きりではない

 一部の業界専門家らは、民間企業が自分で身の回りの世話をすることができなくなった高齢者のための介護施設ではなく、長期滞在用の高級老人施設にばかり重点を置くのではないかと警戒している。

 その一方で、長期介護についての研究を行っている香港大学(University of Hong Kong)のビビアン・ルウ(Vivian Lou)准教授は、健康な60歳の人であればこうした施設に入居後、20年間は生活を送れ、その間、居住空間を奪われることもなく「住居問題の解決策にもなる」と説明する。

 さらに燕園の入居者らにとっては、仲間との交流や、単に一人ではないということが、老人施設で暮らす最大の利点の一つとなっている。

 中国全土の若い労働者たちは、より高い賃金と就労機会を求めて農村部を出て出稼ぎに行くため、もはや実家で両親や祖父母の介護をすることはできない。

 一方エリート層の高齢者たちは、その多くがすでに大都市で暮らしており、子どもたちは海外生活を送っているか、単に自身のキャリアを築くことに忙しくて親類の世話をすることができない。

 かつて語学を教えていた82歳の元大学教授は「子どもたちを当てにはできない」と話す。娘は北京で国際放送のキャスターとして働き、息子は日本にいる。「彼らには自分たちのキャリアがあるし、家族もいる。親の世話をする時間も金銭もエネルギーもない」 (c)AFP/Eva XIAO