【2月15日 AFP】オーストラリア南部タスマニア(Tasmania)州で山火事が1か月以上にわたり延焼を続け、自然林が広域で焼失したことを受け、太古の原生林や高山植物相が絶滅の危機にひんしていると研究者らが警告している。

 タスマニア州ではこのところの雨や雪の影響で火災の勢いが弱まり、豪当局は15日、警報のレベルを下げた。だが、焼失面積はすでにタスマニア島の南西部、中部、北西部で合わせて20万5000ヘクタールを超えている。

 研究者らは、森林火災の規模が拡大した背景には気候変動の影響があるとみている。タスマニア固有の自然環境が受けた被害については、まだ調査中だという。

 オーストラリア原産のユーカリ林は、頻繁に発生する森林火災に大半が適応しているが、タスマニアは、かつて地球に存在した超大陸ゴンドワナ(Gondwana)の一部だった太古の昔から生き続けている原生種の宝庫だ。

 成長に長い時間を要するペンシルパインやキングビリーパイン、クッションプラントなど、世界遺産のタスマニア原生地域(Tasmanian Wilderness)に生息する古代種は、氷河期の環境への適応力はあるが山火事への耐性はない。

「これらの種は、寒く、湿気が常に多く、火災の起きない環境を必要とする」と、火災で焼失した原生林の調査を行ったタスマニア大学(University of Tasmania)のデービッド・ボウマン(David Bowman)教授(環境変化生物学)はAFPに語った。

 ボウマン教授は、古代種について「盆栽園が狂暴化したようなもの」と表現した。ペンシルパインの中には樹齢1000年にもなる個体があるが、無性生殖で子孫を増やしていく種なため、その場所で1万年は生息していることになるという。

 研究者らは、熱帯雨林の湿気が火災の影響を寄せ付けない可能性に希望を抱いている。だが、気候モデルからは、タスマニア島西部の乾燥化が進んでいる傾向や、近年多発する火災の出火原因となっている雷も増加していることが分かっている。

 タスマニア大学気候研究チームの研究員ニック・アール(Nick Earl)氏らは、気候変動によってタスマニアの生態系の存続可能性が永久に変容してしまう恐れがあると、最近の論文で警告している。(c)AFP