■ボードゲームのアナログ感覚を取り入れたゲームも登場

 膨大なコレクションを次世代にも残したいと考えたベルネックさんは、約20年前に非営利団体を設立。「バイエルン・ゲーム・アーカイブ・ハール(Bavarian Games Archive Haar)」と名付けた。

「アラジン(Aladdin)」の魔法の洞窟のようなアーカイブに保管されている数々のお宝の中でも最も古いものは、有名な作曲家たちを題材にした1870年代のボードゲームだ。物議を醸しそうなものもある。アドルフ・ヒトラー(Adolf Hitler)の軍隊が英国を征服する筋立てのナチス・ドイツ(Nazi)時代のボードゲームだ。ベルネックさんは、プロパガンダのために作られた「ひどい代物」と説明した。

 アーカイブがある建物は、ミュンヘン郊外ハール(Haar)の自治体から提供されている。ベルネックさんと15人前後のボランティアは入念に目録を作成し、商品を保管している。そして、ほぼ毎日のように新作が届く。

 おもちゃメーカーは、若者や子どもの間で広がるボードゲーム人気にあやかろうと、先を争ってアナログ感覚を融合させたゲームを売り出している。ボードゲームの古典商品も人気の再燃に便乗し、大ヒットゲーム「フォートナイト(Fortnite)」バージョンの「モノポリー(Monopoly)」なども誕生した。

 ボードゲームは「世相を反映している」と考えるベルネックさんにとって、現在の人気は意外ではない。

 独シーメンス(Siemens)の社員だったベルネックさんは、孫たちと最新ゲームにも興じる。だが、バイエルンのアルプス(Alps)地方で過ごした幼少期は外で遊ぶのが好きで、ボードゲームでは遊んでいなかったと振り返る。高級カタログから初めてボードゲームを買い求めたのは、大人になってからだ。

 以来、ボードゲームに対する飽くなき興味はとどまらず、趣味にお金をかけ過ぎだと妻に言われるほどになった。

 しかしその後、ベルネックさんが書いたボードゲームのレビューがドイツ国内の新聞に掲載されるようになり、その仕事は今も続いている。さらに独自のゲームも考案。1979年には、批評家仲間と「ゲーム・オブ・ザ・イヤー(Spiel des Jahres)」も創設した。

 だが目標は、次の大ヒットゲームを狙うことではない。「境界線を取り払う」ゲームを評価して賞金を贈ることだと、ベルネックさんは話した。(c)AFP/Michelle FITZPATRICK