■チャップリンの復活は喜ばしいが…

 動画の加工は数十年前から行われており、無害な遊びや、時にはエンターテインメントにもなる。映画業界では「チャーリー・チャップリン(Charlie Chaplin)のように死去した有名俳優をスクリーンに復活させることもできると期待が寄せられている」と、米カーネギーメロン大学(Carnegie Mellon University)の研究者、アーユシュ・バンサル(Aayush Bansal)氏は言う。

 だが、「誰であろうと、なんでも言わせることができる。これほど恐ろしいことはない」と指摘するのは、ディープフェイクの検出を専門に研究するニューヨーク州立大学オールバニ校(University at Albany, State University of New York)コンピューターサイエンス学教授のシーウェイ・リュウ(Siwei Lyu)氏だ。

「そのようなことが可能になれば、真実とうその見分けがつかなくなってしまう。情報が本物かどうか信頼できないという状態は、情報が全くないのと同じくらいひどい状態だ」

 米下院のアダム・シフ(Adam Schiff)氏と他2人の議員は最近、米政府のディープフェイク対策について調べるため、ダン・コーツ(Dan Coats)国家情報長官に質問状を送付した。

 議員らはこの中で、「脅迫などの不正目的で個人を攻撃するために、偽造された動画や画像、音声が使用されることが考えられる」と述べ、さらに「国家の安全保障にとってより大きな懸念事項は、虚報を広めようとする国内外の何者かによってこうした映像が使われてしまう恐れがあることだ」と指摘した。