■板挟みの旌善

 アルペンスキーの滑降種目を開催するには、800メートルのまっすぐな斜面を用意することが、国際スキー連盟(FIS)の規則で定められている。冬季五輪の招致に成功した時点で、韓国にその条件を満たす山はほとんどなく、可里旺山(Mount Gariwang)は数少ない候補の一つだった。

 ところが一つ問題があった。一帯の森林が保護区域に指定されていたのだ。

 大会主催者は、山林庁から一時的な開発の許可を取り付け、怒った保護団体には大会後に森林を復元すると約束した。ところが付近の旌善(Jeongseon)郡の住民は、約束は無視して1億7000万ドル(約188億円)を投じた五輪施設を観光資源として維持しろと抗議。会場の未来をめぐって対立が起こっている。江原道(Kangwon Province)の知事によれば、再森林化には、そもそも整備と同じだけの費用がかかるという。

 かつては炭鉱の町だった旌善は、2004年に最後の鉱山が閉鎖された。抗議に定期的に参加しているという地元の50代の男性は、「五輪のレガシーによって観光客が集まり、経済が盛り上がるのに期待していたが、実際はどん詰まりだ」と話し、「ほとんど誰も来ない」ことに「裏切られた」気分だと続けた。

 2018年に開業した宿泊施設は、1月の料金を8割以上も値引きした。地域最大のリゾート地で、回転種目などが行われた竜平(Yongpyong)も、12月と1月の観光客は五輪開催前より少なかったという。