■一帯一路構想の要衝都市

 中国からの投資が最も顕著なのが、同国が推進する広域経済圏構想「一帯一路(One Belt One Road)」の要衝となるシアヌークビルだ。この構想には、シアヌークビルと首都プノンペンとを結ぶ高速道路の建設計画も含まれている。

 ユン・ミン(Yun Min)州知事によると、2016~18年の中国官民によるカンボジアへの投資額は10億ドル(約1100億円)に上る。シアヌークビルの現在の人口の約30%は中国人が占めており、その数はここ2年間で急増したという。

 中国はまた大々的な軍事交流も模索しており、周辺国と領有権を争う南シナ海(South China Sea)へのアクセスが容易なシアヌークビルの北のココン(Koh Kong)州沿岸沖に、海軍基地の建設を目指しているのではないかとの臆測に拍車をかけている。

 シアヌークビルの港では最近、中国の巨大な軍艦3隻がドック入りしたが、カンボジアのフン・セン(Hun Sen)首相は港湾建設の可能性を強く否定した。

 また同首相は最近、北京を訪問した際に、中国からの5億8800万ドル(約640億円)の経済支援、および2023年までに両国間の貿易額を100億ドル(約1兆1000億円)に引き上げるという約束を携えて帰国した。

 不動産サービス大手CBREによると、同市の不動産価格は過去2年間に高騰し、1平方メートル当たり500ドル(約5万4000円)程度だった海岸近くの物件価格は5倍にも値上がりしているという。州知事は「彼らは、われわれの潜在能力を見込んで投資をしている」と話す。

 だが新たな土地開発は、土地の所有権をめぐる昔からの争いを鎮めることをより困難にしている。カンボジアでは富や影響力が法律に勝り、政府とつながりをもつ富豪や実業家が土地を手に入れてきた歴史がある。

 スピアン・チア(Spean Chheah)地区のスン・ソファト(Sun Sophat)代表は、「中国によるシアヌークビル州への巨額投資は、貧困層には何の恩恵もない」「利益を得るのは富裕層と権力者だけだ」と語った。(c)AFP/Suy SE and Sophie DEVILLER