■カルチャーとなった社会的意識

 ワシントンの博物館のオープニングで行われたコンサートでは、グランドマスター・カズにシュガーヒル・ギャング、もう一人のヒップホップの先駆者メリー・メル(Melle Mel)と、オールドスクールのスターがそろい踏みした。

 ヒップホップ黎明(れいめい)期からのバンド「グランドマスター・フラッシュ・アンド・ザ・フューリアス・ファイヴ (Grandmaster Flash and the Furious Five)」のメンバーであるメリー・メルは、ヒップホップのもう一つの礎となる「ザ・メッセージ(The Message)」の歌詞を共作した。

 スラム街の人生を描き、貧困など社会経済的な問題を取り上げたラップソングとして初めてレコーディングされたこの作品は、1982年にリリースされた。社会の病に挑むことが、ラップのテーマに加わった。

「何か違うことを試したいと思ったんだ。どれだけうまくラップできるか聞かせたり、女の子のことを歌ったりするような(当時の)ヒップホップの基本にとらわれないものを書きたかった」「シリアスな内容だったから、あんなに人気が出て売れるなんて僕も思っていなかった」とメリー・メルは振り返る。この作品は旋風を巻き起こした。

 グランドマスター・フラッシュは、2007年に米ポピュラー音楽の殿堂である「ロックの殿堂(Rock and Roll Hall of Fame)」に名を連ねる最初のラップアーティストとなった。「これで僕たちのバンドとヒップホップ音楽が、しかるべきレベルに位置付けられた。他の偉大な音楽ジャンルとともにね」とメリー・メルは語る。

 今日のヒップホップは、草創期のものとは大きく違うものになっているが、「生みの親たち」はその将来について楽観的だ。

 マスター・ジーは「止められないものを止めることはできないし、殺せないものを殺すことはできない」と言って、にやりと笑った。「それがヒップホップだ」 (c)AFP/Leo MOUREN