■「私たちが生きている間、エルビスは決して死なない」

 住民たちは今も、1年を通して農業や鉱業、運送業などに従事しているが、エルビス・フェスティバルは、パークスのサービス業の発展、そして人口増加にも寄与している。オーストラリア統計局(Australian Bureau of Statistics)によると、パークスの人口は過去10年間で4%増加し、約1万2000人になった。

 パークスは農村地域再生のモデルだと、豪ウロンゴング大学(University of Wollongong)の人文地理学の専門家、クリス・ギブソン(Chris Gibson)氏は言う。

 パークスの成功に刺激を受けて、他の小さな町も音楽がらみの独自のイベント企画を始めた。パークスに近いトランドル(Trundle)の「アバ・フェスティバル(ABBA Festival)」や、カンドス(Kandos)の「ボブ・マーリー・フェスティバル(Bob Marley Festival)」などだ。

「パークスはおろか、オーストラリアさえも一度も訪れたことがないアーティストのフェスティバルをやる。しかも真夏の猛暑の中でポリエステルのジャンプスーツを着るなんて、楽なわけがない」と、ギブソン氏。「けれど、そういった遊び心の部分が、フェスティバルをこんなに成功させている」

 エルビス・フェスティバルには、若者の来場者も増えているが、半数以上は55歳以上の世代だ。レノックスさんの博物館を訪れたある女性は目に涙をためて、「エルビスは死んでない。生きている。そこにいる!」と言ったという。

 レノックスさんはこう答えたという。「そう、その通り。私たちは可能な限り、彼を生き続けさせようとしている。私たちが生きている間、彼は決して死なないのです」 (c)AFP/Glenda KWEK